酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
高校野球部員が“6年で19%減”… 初センバツの公立・三島南の監督が語る「幼稚園児への普及」に力を入れる理由
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/03/19 17:02
三島南高校は野球普及活動などが評価され、21世紀枠でセンバツ初出場を果たした
「上の言うことを聞くだけ」の高校球児ではない
選手たちは子どもたちに野球の手ほどきをしながら、どんどん目が輝いてくる。野球に初めて出会った子どものころの記憶がよみがえってくるのか、子どもの反応が嬉しいのか。いつ見てもちょっと感動的だ。恐らく選手たちは、「子供たちに野球を教えることで、選手自身も成長している」のではないかと思う。
子どもに野球を教えるためには、第一に子供が怪我をしないように安全に気を付けないといけない。そして野球の動作を子供にわかるように、言葉と体の動きで伝える必要がある。
「上の言うことを聞くだけ」と言われがちな高校球児が、自分の頭で考え、工夫をし、コミュニケーションするのだ。野球教室を実施した指導者たちも口をそろえて「選手たちも変わる」と言う。
常連校では「普及活動を実施したいとは思うが……」
しかしながら「200年構想」以降、子どもたちへの普及活動を実施する高校は期待したほど増えていない。ある甲子園の常連校の監督は「実施したいとは思うが、練習や練習試合が多くて日程が確保できない」と言った。
指導者たちは普及活動の必要性は理解しているが、「野球教室をすることが自分たちにとって何につながるのか」をはっきり認識できないから、実施できない。端的に言えば「メリット」が見えないのだ。
活動が認められて21世紀枠でセンバツに
今年の1月末、筆者のスマホが鳴った。三島南高校の稲木監督からだった。
「21世紀枠での選抜出場が決まりました」
「え、本当ですか? おめでとうございます。野球教室をやったことが考慮されたんでしょうか?」
「そうだと思います。野球振興の活動を評価してもらったことで、今後大きな変化があるかもしれません。うちのような取り組みをする学校が増えるかもしれません」
こういうことがあるんだ、と思ったとともに、さっそく稲木監督にインタビューした。
――三島南高校の活動が、甲子園につながると思っていましたか?