酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
高校野球部員が“6年で19%減”… 初センバツの公立・三島南の監督が語る「幼稚園児への普及」に力を入れる理由
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2021/03/19 17:02
三島南高校は野球普及活動などが評価され、21世紀枠でセンバツ初出場を果たした
「正直、甲子園につながるとは思いませんでした。私は高校野球の指導者になった当初から、少年野球や中学野球との野球教室による連携をしたいと考えていましたが、少し前まで規定違反となり出来ませんでした。また公立高校の教員は若いうちは短い年数で異動があり、地域に根差していくことが難しいのですが、落ち着いて指導できる年数となり、自宅のある三島市内の三島南高校に勤務するようになりました。そこで少年野球をやりたいと思う子供を増やすために保育園児へのアプローチを始めたんです」
選手はYouTubeの動画なども参考にプランを
――野球教室を始めて6年になりますが、変化がありましたか?
「今は、学校のホームページで告知を行い、参加者はスマホで申し込みます。その管理も私のスマホで行っています。便利になりました。
実施される体験会の教材は徐々に増えていきました。テニス部から譲り受けたテニスボールや軟式ボール、キャッチボール用ボールなど参加者に合わせて使い分けられるようになっています。手作りの的、Tボールセットもどんどん進化しています。
今の野球教室は、対象(園児、小学生低学年、小学生高学年、経験者か未経験者なのか、少年野球教室)によって私がタイムテーブルと大まかな内容をつくり、指導案を選手にLINEで伝えて具体案を考えさせます。選手たちは過去の子供達の反応やYouTubeの動画なども参考にプランを立てます。
最近は、野球教室の運営も選手に任せているので、私はもっぱら見る側に回って、危険なことがないか、つまらなそうにしている子供がいないかを見ています。受付から実施まで選手がやるので、私は当日、やることはあまりなくなっているんですよ」
当然「勝つ」ことが目標だが、最終的な目的は……
――三島南高校野球部にとって「野球をする」ことの目的は何でしょう?
「競技ですから当然、『勝つ』ことを目標にしていますが、最終的な目的は野球を通じて人間形成をしていくこと、つまりは自己実現していくことだと思っています。
選手には野球を通じて『「自分」-「野球」(※自分マイナス野球)』となった時に、どんな自分が残るかということを学んで欲しいと伝えています。
公立高校の場合、監督以外に指導者がいない学校も多いんです。うちも指導者は実質的に私1人です。どうしても指導者が足りないという部分があるので、選手自身も指導者的な目線を持たなければいけないと選手に言い聞かせています。高校生であっても『成熟した考え方』ができるようになるのが大切なんです。野球普及活動は、そういう意味でも有効ですね。選手に『企画、運営、実行、改善』と様々な経験をさせることができます」
――選抜出場が決まりました。どんな戦い方をしますか。