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センバツ史上初“ブラバン録音応援”ウラ話 高野連が「暴れん坊将軍」「紅」などを“20曲リスト”に選んだワケ

posted2021/03/19 11:02

 
センバツ史上初“ブラバン録音応援”ウラ話 高野連が「暴れん坊将軍」「紅」などを“20曲リスト”に選んだワケ<Number Web> photograph by Yukiko Umetsu

市立尼崎高校は2019年の夏の甲子園で沖縄尚学を応援。友情応援の経験が豊富な彼らの演奏が今年も甲子園に響く

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梅津有希子

梅津有希子Yukiko Umetsu

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 19日に開幕した第93回選抜高校野球大会。新型コロナウイルス感染症対策で、吹奏楽部による演奏の応援が禁止されたが、「事前に録音した応援曲を、阪神甲子園球場のスピーカーから流す」というかつてない試みが行われる。音源は1曲2分~2分半程度で、1校10曲まで。流す曲は、打順ごとか、イニングごとに指定できる。

 一体どのような経緯でこのような応援が実現したのだろうか。日本高校野球連盟・事業課長の古谷純一氏に聞いた。

「昨年夏の甲子園も新型コロナウイルスの影響で中止になり、センバツ出場予定だった32校が1試合ずつの交流試合を行いましたが、その時にも各校の関係者から『録音した音源を流してもらうことはできないか』という声がありました。今回も同様の声がありましたが、吹奏楽の応援禁止が決定したのが、2月18日のこと。開幕まで約1カ月しかないなか、球場関係者などと調整を重ね、なんとか実現できることになりました」(古谷氏)

 このような試みは、甲子園史上初だろう。

「そうですね。20年以上いる職員もいますが、今回が初めてだと思われます。正直、『時間がないのに本当にできるのか』という意見もありましたが、音楽の力で選手たちを後押しできればと、実施にこぎつけました」(古谷氏)

音源のない学校のために、市立尼崎高校に録音を依頼

 ようやく各方面との調整がつき、出場校に連絡できたのは開幕10日ほど前のこと。とにかく時間がなかったため、スケジュールの都合などで録音できない学校もあるはずだ。試合中、応援曲を流す学校がある一方で、対戦相手は音源がなく応援曲を流せないというケースも出てくるだろう。そのような事態を避けるため、尼崎市立尼崎高校吹奏楽部に応援曲の録音を依頼してCDを制作。音源のない学校は、そのCDを利用することができる。

 今回、出場校32校中21校から音源が届いた。吹奏楽部出身の筆者は毎年アルプススタンドで吹奏楽部の応援を取材しているが、吹奏楽部がないため他校に友情応援を頼む学校のほか、ごく少人数の部員で活動しており、OBや一般の吹奏楽愛好家が助っ人に駆けつけるケースも少なくない。

「我々がもっとも大切にしているのは平等性です。やるならフェアにやりたいと思い、甲子園の地元であり、友情応援の経験も豊富な市立尼崎高校さんにお願いしました」(古谷氏)

【次ページ】 約60曲のレパートリー「どれでも吹きますので」

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