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原口健飛とは何者か? “空手とボクシングをキックで融合”に成功したが、白鳥大珠戦に「めっちゃビビってます」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2021/02/27 17:03

原口健飛とは何者か? “空手とボクシングをキックで融合”に成功したが、白鳥大珠戦に「めっちゃビビってます」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

昨年10月、直樹(右)を下した原口健飛はいよいよ白鳥大珠との闘いに挑む

原口健飛とは、いったい何者なのか

 もともと原口の実力は折り紙付き。昨年8月にはRIZINに2度目の参戦を果たし、前回は引き分けている元K-1王者の大雅から3ノックダウンを奪った末にKO勝ちを収めている。その前には“バトルサイボーグ”秀樹やKNOCKOUTの元エース森井洋介をいずれもKOで葬っている。

 唯一の黒星は2017年11月23日に行なわれた内藤大樹戦のみ。このときの原口はまだデビュー3戦目だったのとは対照的に内藤の方は30戦以上のキャリアを持っていたので、勝負が延長にもつれ込んだだけでも原口は並外れた高いポテンシャルを示したといえる。

 原口健飛とは、いったい何者なのか。

「わかりやすく言うと、原口は空手とボクシングとキックボクシングという3つの打撃系立ち技格闘技をうまく融合させた希有な存在です」

 そう語るのはRISEの伊藤隆代表だ。確かに原口は幼少時にフルコンタクト空手を始め、全日本選手権でも優勝するなど目立った活躍を見せている。その後17歳でプロボクサーとして地元関西でデビュー。高校生で西日本新人王決定戦に出場している。それから空手に復帰したうえで、17年6月にキックボクサーとしてプロデビュー。現在に至る。

「空手系、ボクシング系と分けるのはナンセンス」

 この世界は空手出身だと蹴りが得意、ボクシング出身だとパンチが主体というレッテルを貼られやすい。確かにそういう傾向は否定できないが、どちらの競技も経験している原口の場合、一概に何が得意とは言い切れない。原口は「最近はパンチが好きだけど、試合になったらどうしても蹴りが多くなってしまう」と蹴り系であることをやんわりと主張するが、オールマイティであることは確か。いみじくも伊藤は「原口はパンチもできれば、三日月蹴りのような蹴りもできる」と舌を巻く。「そうかと思えば飛びヒザ蹴りを放ち、また着地する前にワンツーを打っていたりする。だから原口を空手系、あるいはボクシング系というカテゴリーに分けることはナンセンスなんですよね」

 原口が登場する以前にも、空手とボクシングのキャリアを併せ持ち、それをキックで融合しようと試みる選手はいた。しかし、大きな成果を残したという話は記憶にない。それはそうだろう。大きな枠だと3つとも打撃系の格闘技という枠に収まるが、ルールも許容される攻撃手段も異なるので、距離も違えば身体の重心も違う。かつてキック界には「ボクシングジムで練習しても強くなれない」と説く指導者もあまたいたことを思い出した。

 では、なぜ原口は融合に成功しているのか。それは、この男に類まれな格闘センスがあるからにほかならない。

「普通にキックのセオリーに当てはめると、融合することはできない。けれど、原口独特の感覚でくっつけている印象がある。過去にはないやり方なので、相手も読みにくい」(伊藤)

【次ページ】 那須川天心と原口の共通点とは

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