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《箱根駅伝》四強・明大は、なぜ“シードすら”取れなかったのか?「大学駅伝の戦国化が進む」2つの要因
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2021/01/08 11:02
往路14位と大きく出遅れた明治大学。復路でも追い上げは厳しく、総合11位に終わった
実際、創価大の榎木和貴監督は、「練習は特別なことをしておらず、学生時代に中央大で箱根を目指していた時、今の東京国際大の大志田監督がコーチ時代に立ててくれたメニューを参考にしながら作りました。その中で旭化成での経験や指導者の経験をうまく織り交ぜながら今の選手たちに合った指導に落とし込んでいます」と語っている。
今回の創価大の躍進は、1年生から泥臭い練習を始め、2年、3年かけて地道に育て、実を結んだ成果と言える。
「強豪校がスカウティングに有利」は、もう成り立たない
「スカウティング」による選手の分散も、戦力格差を縮小している要因の1つだろう。有望選手のスカウティングは、ここ数年、熾烈さを増している。
これまでは、スポーツ推薦で授業料や寮費などの免除やスポーツ奨励奨学金などを出せる大学は限られていた。そのため、行きたい大学があっても家庭の経済環境が厳しい選手は断念せざるを得ず、経済的な支援が可能な大学に行くケースが多かった。
だが、最近は箱根常連校をはじめ、全体的にスポーツ推薦枠の数が増え、経済的なサポートが受けやすくなってきている。同時に、高校生ランナーの見る目も変わりつつある。
以前は、有力選手はもちろん中間層にも平均レベル以上の選手をそろえた強豪校からの誘いに、二つ返事で承諾する学生は多かった。金銭的なサポート以外にも、魅力的なチーム作りや確固たる戦略は、箱根駅伝を目指す学生にとって何より重要だったからだ。
しかし選択の間口が広がったことで、大学の強化方法や寮などの環境、チームの雰囲気、監督の指導に加え、専攻できる学部や教職課程の履修、さらに将来の目標などを総合的に判断し、「箱根だけがすべてではない」と強豪校の勧誘を断って、自分がやりたいことができる大学を選択するケースが増えてきている。
SNSで選手同士がつながり、各大学の情報や練習動画など、さまざまな情報が得られるようになったことも影響力として大きい。
実際に昨年の都大路を走った選手の進路は、箱根強豪校だけではなく、予選会を走る大学などにも分散している。選手の意識や思考が多様化したことで、「箱根強豪校がスカウティングに有利」という図式は以前ほど成り立たなくなってきているのだ。