オリンピックへの道BACK NUMBER
根拠はある? IOCバッハ会長「東京五輪、開催を確信」 関係者、選手たちはどう読み取ったのか
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2020/11/29 11:01
国立競技場を視察したIOCバッハ会長。開催を不安視する声について問われ、「とにかく私たちとしては説明を続けるしかない」と思いを明らかにした。
国際大会を数々経験してきた選手の感想
ではいったい何が、それらの発言につながっているのか。組織委員会関係者はその真意をこう推測する。
「中止になる可能性は十分知っているでしょう。世界がこんな状態なのですから。だからこそ、IOCとしてはとにかく開催に前向きで、開催を疑わない姿勢を示すことで、もし中止になったとしても、『我々はこんなにやろうとした』と言い訳できるようにするためだと思いました」
開催に弱気な姿勢を見せると降りてしまうかもしれないスポンサー企業を引き留めるためなど、他の思惑もあるかもしれないが……。
「あんなに自信たっぷりで言うとは」
国際大会を数々経験してきた選手は、驚きを隠さずにそう言った。さらにこう語る。
「今の状態で、ああいう言い方が、みんなのプラスになるのかどうか……」
現場をどこまで慮っていたのだろうか
その言葉は、海外の選手を思ってのことだった。
国際舞台を経験しているからこそ、その中で交流を深めるようになった海外の選手たちがいる。彼らの置かれている環境を考えてのひとことだった。その選手なりに、当事者である選手たちへの思いやりが欠けているように感じていたのだろう。
当然、オリンピックは開催してほしいという思いはある。ただ、そこにとどまらない他者への想像力を選手たちは有しているのだ。
現場をどこまで慮っての一連の発言やふるまいだったのか。
そう考えると、さらに違和感が残る今回の来日だった。