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根拠はある? IOCバッハ会長「東京五輪、開催を確信」 関係者、選手たちはどう読み取ったのか
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2020/11/29 11:01
国立競技場を視察したIOCバッハ会長。開催を不安視する声について問われ、「とにかく私たちとしては説明を続けるしかない」と思いを明らかにした。
ワクチンを接種してほしいと言われても……
「これまでも開催を確信しており、これ以上の確信はないと思っていましたが、総理や都知事との会談で完全に考えが共有され、さらに確信しました。疑いの余地もまったくなくなりました」
さらには、大会の頃にはワクチンが開発されているだろうと語り、来日する選手や関係者は接種してほしいという希望も述べた。
これには、組織委員会関係者からも疑問が呈された。
「まだできていないし、流動的なものなのに、もうワクチン完成は現実的でみんなが接種できるかのように感じられる物言いはどうなんでしょうか」
今、日本では再び感染が拡大しつつある。ここまでも細心の注意を払い、懸命の努力を重ねて、開ける大会もいくつか出てくるようになった。ただ裏を返せば、それほどまでに大会を開催することは簡単なことではないということでもある。
ましてや海外に目を向ければ、各地で感染が再拡大し、ロックダウンなどの措置も相次いでいる。
その言葉は自覚的、意識的であったと思える
スポーツもその影響を免れない。
国際柔道連盟は11月11日に年内の主要な国際大会中止を発表したし、その前日には世界レスリング連合が12月の世界選手権を断念することを明らかにしている。
数々の競技がスケジュールに大きな影響を受け、オリンピック出場権をかけた五輪予選の開催が定まっていない競技も珍しくない。
何よりも、多くの選手がトレーニングに打撃を受けている。
それを知らないはずがない。状況を把握していて、なお語った一連の言葉は、だからこそ自覚的、意識的であったと思える。