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爆発ヒット『地球の歩き方 東京』の“幻の五輪ページ” 「800ページで作りませんか」「君、正気か?」
posted2020/11/15 17:00
text by
田口大貴Daiki Taguchi
photograph by
Diamond-Big Co., Ltd/Daiki Taguchi
「満員電車は東京名物ともいうべきものだが、甘く見てはいけない」
「何も買わずに我慢できるなら買い物代はゼロ。しかし、東京には誘惑が多い。(中略)予算オーバーしてまで買うべきものかどうか熟考しよう」
子どもじゃないんだからわかってるよ、と思うだろうか。
ではこれはどうだろう。
「丸ノ内線 路線の色はイギリスのたばこの箱に使われていたレッド」
「有楽町線 路線の色は、都心のオフィス街などをイメージしたゴールド」
「南北線 路線の色は、沿線に点在する日本庭園をイメージしたエメラルド」
丸ノ内線がおしゃれすぎる。そして有楽町線を黄土色の路線と呼んでいてごめんなさい。
「経験したことのないスピードで部数が」
こんな東京のあれこれが詰まった本、『地球の歩き方 東京』が今売れている。ご存知の方も多いだろうが、『地球の歩き方』は圧倒的な情報量が特徴の海外旅行用ガイドブックシリーズ。海外旅行者のバイブルとも言えるこのシリーズから初の国内版が出版され、「おやおや」と発売当初からファンの間で話題になっていた。
書店で行われるであろうオリンピックフェアに『地球の歩き方』としても参加したいという思いで出版を決めたというこの一冊。日本中が揺れた2020年、ちょっと変わったこのガイドブックはどのように生まれたのだろう。
「今年はコロナもあって、東京は『Go To』から外されるし、みるみる斉藤の顔が『え? この状況で? 出すの?』って青ざめていきましてね」
編集長の宮田崇さんはこの本を担当した斉藤麻理さんについてそう語った。
「もう、『なんかあったら大丈夫だから、俺が責任取るよ』くらいの気持ちで出したらこんなことに。この10年でも経験したことのないスピードで部数が伸びています」
10月28日の取材時点で発行部数は7万3000部。発売から1カ月半で6刷に到達したという。
元編集長の鈴木達也さんも、宮田さんに呼ばれて今回の東京版の制作に携わった。鈴木さんは始まりの瞬間をこう振り返る。
「あれは(2019年の)4月でした。皇居が開放されている時期で、私はひとりで桜を愛でていたんですけどね、いきなり宮田くんから連絡が来て。『地球の歩き方 東京』、800ページで作りませんかって」
「そしたら『馬鹿かお前は』と言われました」
「そんな言い方はしておりません。『君、正気か?』と」