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爆発ヒット『地球の歩き方 東京』の“幻の五輪ページ” 「800ページで作りませんか」「君、正気か?」
text by
田口大貴Daiki Taguchi
photograph byDiamond-Big Co., Ltd/Daiki Taguchi
posted2020/11/15 17:00
『地球の歩き方 東京』は通常の海外版に劣らない情報量で話題だ
「経験則的に申し上げて、どう考えても」
4月に連絡が来て、来年の6月に出す。わずか1年と少しで800ページを1から作るという相談に鈴木さんは言った。
「経験則的に申し上げて、どう考えても無理でございます」
しかし宮田さんは譲らない。『地球の歩き方』40周年、2020年東京オリンピック、このメモリアルイヤーに記念本として、お祭りとして出さずになんとする。ついに『地球の歩き方 東京』は動き始めた。
こうして異動してきたばかりの斉藤さんは、編集長を退き「ただの旅人に戻った」鈴木さんと「地球の歩き方イズム」を追い求めることになった。
昔からある江戸文化や、相撲も
制作にあたって初めに決めたことは「昔からある江戸文化や、長く続いているお店、体験を軸にしよう」ということだった。
「日本人でも言われてみれば行ったことないな、とか成り立ちは知らないな、というところを紹介したいという気持ちがありました」(斉藤さん)
江戸のスポーツと言えば何といっても相撲だろう。
本書には相撲ページもあるが、そこにも「地球の歩き方イズム」が色濃く映されている。
離席は自由、飲食自由、ビールOK。国技館の地下には巨大な焼き鳥工場があり、縁起物(2本脚で立つため)を食べながら観戦できる。取組後の力士はサインに応じてくれる場合も……。
これを読んでいるだけで両国国技館に遊びに行きたくなる。斉藤さんの狙いはそこにあった。
「相撲を見に行くというのももちろんそうなんですが、国技館に行くということ自体がイベントなんです。行くとのぼりが立っていて、始まる前からいろんなグルメを楽しめる。取組が始まったら見ながら飲んだり食べたりできるんです。力士さんが一緒に写真を撮ってくれるとか、グッズとか、今年取材できなかった楽しい部分もたくさんあります」
一方コロナで取材が思うようにいかなかったからこそ、ページに生まれた余白で相撲の歴史は詳しく書けたという。
「『地球の歩き方』自体が、すべての入り口であるべきと言われていて、もともと興味がなかった人もこれをぺらぺら読んで、『知ってるようで知らなかった、行ってみようかな』と思うきっかけになってくれたら嬉しいですね」(斉藤さん)