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マスクにソーシャルディスタンス。それでも、スポーツクライミングならではの光景が戻ってきた『Top of the Top 2020』

posted2020/11/20 11:00

 
マスクにソーシャルディスタンス。それでも、スポーツクライミングならではの光景が戻ってきた『Top of the Top 2020』<Number Web> photograph by Ichiro Tsugane

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津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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Ichiro Tsugane

 歓びと緊張感――日本代表ユニフォームを着るからこそ味わえる感触を、選手たちはその手に握りしめていた。

 新型コロナウイルスによって東京五輪が延期となった今年、さまざまな競技と同様にスポーツクライミングも国際大会は軒並み中止になった。12月に予定されているアジア選手権が開催されれば、その出場選手は日本代表ユニフォームを着られるものの、それ以外の選手たちは一度も代表ユニフォームに袖を通すことのないままシーズンを終える可能性もあった。

 そうした事態を避けるべく、10月31日・11月1日に愛媛県西条市の石鎚クライミングパークSAIJYOで開催されたのが、『Top of the Top 2020 ~スポーツクライミング日本代表の頂上決戦~』。

 野口啓代と楢﨑智亜(ともにTEAM au)という2020年東京オリンピック代表候補選手を筆頭に、JMSCAオリンピック強化選手、今季のボルダリングとリードの代表選手たちを合わせた、男女34名の日本代表選手が2日間に渡って「いまある力」を発揮した。

強化委員会が主催した大会

 この大会は春先の緊急事態宣言化にオンライン取材した際、日本代表強化責任者の安井博志ヘッドコーチが「国際大会を目標にしてきた選手たちには、それに代わるものを提供したいと考えている」と語っていた、それである。

関連記事:こういう事態に何ができるのか。スポーツクライミングの現在(いま)。
( https://number.bunshun.jp/articles/-/843263 )

 通常の国内大会はJMSCAスポーツクライミング部の競技委員会が主導して行うが、この大会の主催は安井ヘッドコーチなど強化スタッフが属する強化委員会。代表強化の一環としての模擬大会という位置付けになるのだが、試合に飢えていた選手たちは真剣な眼差しで競技と向き合った。

 初日はボルダリングで、女子優勝は中村真緒(青山学院大)。完登数は野口(2位)、伊藤ふたば(3位/TEAM au)と並びながらも、ゾーン獲得数で上回って笑顔を弾けさせた。男子は高田知尭(鳥取県山岳・スポーツクライミング協会)が、アテンプト数の差で楢﨑智亜(2位)、緒方良行(3位)との争いを制した。

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