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爆発ヒット『地球の歩き方 東京』の“幻の五輪ページ” 「800ページで作りませんか」「君、正気か?」
text by
田口大貴Daiki Taguchi
photograph byDiamond-Big Co., Ltd/Daiki Taguchi
posted2020/11/15 17:00
『地球の歩き方 東京』は通常の海外版に劣らない情報量で話題だ
コストと製造原価を考えるとこの値段は破格
オリンピック関係の物件では唯一国立競技場を載せることができた。そのページには「建築家の隈研吾氏らが設計しており、軒庇には47都道府県の国産木材を使用。(中略)観客席は木漏れ日をイメージした配色」とある。この紹介文はきっとオリンピックの何年後に見ても色褪せることはないだろう。
「東京オリンピックの記念すべき年にその都市にいられること、遊びに来られること。オリンピックだけではなく、“オリンピックの時の東京”という永久に残るこの年を残したいという思いがありました」(斉藤さん)
10ページ以上を割く予定だったという大きなオリンピック観戦特集ページ。まるごと無しにしてしまったことへの編集部の思いは、この本の値段からもわかる。「1836円+税」(消費税10%で計算してみてほしい)。
宮田さんが語る。
「この本にかけたコストと製造原価を考えるとこの値段は破格なんです。経営的には『ちょっと安すぎるんじゃないの』って言われました。でも言ってやりましたよ。『いやいや、これは、お祭りなんで』って」
だから何度も重版をかけた今、書店で大量に積まれているのを見ると「お腹痛い」そうだ。売れれば重版、重版かければお腹痛い、編集長は誠に大変である。
旧石器時代から、年表でみる東京の歴史
最後にこの一冊への思いを聞いた。
「表紙のキャッチが全てです。『伝統と聖地、粋と旬 江戸とTOKYOの魅力を満載!』。江戸から東京への時間の流れをどうこの一冊にまとめるかというところだったと思いますね」
鈴木さんはそう言うと、「年表でみる東京の歴史」のページを開いた。
「年表に8ページも使ってるガイドブックなんて他にはないですよ。旧石器時代から、『2020年 東京オリンピック・パラリンピックが延期』までですよ」
これはよく見るとただの年表ではない。「1834年 水野忠邦、老中となる」と「1837年 徳川家慶、十二代将軍となる」の間に「千疋屋総本店が創業」だとか、「1945年 ポツダム宣言を受諾」と「1946年 日本国憲法公布」の間に「栄屋ミルクホールが創業」と、この本で紹介された物件の情報が入り込んでいるのだ。
「載せた物件を各時空に落とし込んでいるんです。これひとつとっても地球の歩き方らしさが必要だったかなって。この豊島屋本店さんなんて関ヶ原の前から営業しているわけです。これはまさにガイドブックにしかできない年表じゃないかなと思います」