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“卑怯”な救済案? 富の集中と異常給与のプレミア、外国人オーナー乗っ取り回避も…
 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/10/22 06:00

“卑怯”な救済案? 富の集中と異常給与のプレミア、外国人オーナー乗っ取り回避も…<Number Web> photograph by Getty Images

圧倒的なクオリティーのプレミアリーグだが、“金のなる木”には危うさもはらんでいる

放映権収入の分配以外にも支援方法はあるはず

 プレミアリーグ独自の資金援助策が実施される場合も、異なる方法を取るべきだろう。

 一方、チャンピオンシップ救済に乗り出す際、こちらはPBPにも盛り込まれていたようなサラリーキャップ導入を条件とする手は有効だ。

 今夏に導入を決めたリーグ1、リーグ2と違い、今季も選手給与に上限を設けていないチャンピオンシップでは、一昨季の合計収益に占める給与支出の割合が100%を超過する事実が監査報告で指摘されている。

 また、放映権収入の分配以外にも支援方法はあるはずだ。

 例えば、下部リーグからユース選手を引き抜いた際に支払う補償金。育成年代の移籍に関する現行ルールでは、下は3000ポンド(40万円強)から始まる低額で済んでしまうが、プレミア勢が買い手の場合は、より移籍金に近い規模の額が支払われる仕組みがあってもよいだろう。

 海外遠征が増える一方のプレシーズンに、ひと昔前までのように、下部の地元クラブや所縁のあるクラブとの親善試合で入場料収入をもたらすこともできる。筆者も、ハダーズフィールド(現2部)がクラブ創設100周年を迎えた2008年夏は、互いにハーバート・チャップマンという名将を元監督に持つ縁にちなんだアーセナルとの親善試合のチケットを買い、当時リーグ1所属だったハダーズフィールドのホームまで足を運んだものだ。

新型コロナの悪影響がある中で

 もちろん、プレミア勢にも新型コロナの悪影響はある。長期展望で自らのクラブ財政を保護する手段も検討すべきだ。

 サラリーキャップは難しいとしても、かれこれ10年以上前から必要性を唱える声がある出来高割合が高い給与体系への切り替えが叶えば、全体的な給与支出は抑えられるはず。極端な例を挙げるとすると、昨季終盤からベンチ外が続くメスト・エジルに対して、週給35万ポンド(4700万円強)のサラリーを支払う“ムダ”は避けられる。

 緊急会議翌日の10月15日には、元イングランドFA(サッカー協会)会長デイビッド・バーンステイン、元FA代表責任者デイビッド・デービス、元代表DFガリー・ネビルら、母国の識者たちも名を連ねる団体から「マニフェスト・フォー・チェンジ」も発せられた。これは、富の分配策からサポーターとの協調策までを、リーグでもFAでもない第三者的な組織に管理を委ねて改善と近代化を図る、国内プロ・サッカー界の抜本改革宣言だ。

 呼び名が「プロジェクト」であれ「マニフェスト」であれ、責任者がプレミアリーグであれ独立他団体であれ、サッカーの母国はコロナ下の緊急事態を回避した。

 外国人オーナーにつけ入る隙を見せなかった今回の騒動を教訓として、イングランド・サッカー界は展望を忘れず、改革へ向けたきっかけとしなければならない。

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