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ネイマール侮辱疑惑も…酒井宏樹のクールな対応に、ブラジル人記者が驚嘆した理由
posted2020/10/05 17:02
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
フットボールの品位を損なう嘆かわしい出来事が、少々意外な形で結末を迎えた。
9月13日にパリで行なわれたフランスリーグ第3節のパリ・サンジェルマン対マルセイユ戦の終盤、接触プレーから両チームの選手がもみ合い、乱闘となった。
主審は双方から2人ずつ退場させた後、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)モニターでネイマールがマルセイユのスペイン人CBアルバロ・ゴンサレスの後頭部を殴っていたことを確認し、レッドカードを示した。
激昂したネイマールは、ゴンサレスから「モノ」(スペイン語でサルを意味する)と呼ばれたと主張。「明らかな人種差別行為」と糾弾した。一方、ゴンサレスはネイマールから同性愛者を侮蔑する言葉をかけられたと反撃した。
ブラジルでは読唇術の専門家が検証
2日後、フランスリーグのノエル・ル・グレット会長は「試合終盤に起きたことは、模範的ではなかった」としながらも「フランスのスポーツとりわけフットボールにおいて、人種差別は存在しない、もしくは極めて少ない」と語り、事態の矮小化に懸命の様子だった。
フランスリーグの規律委員会は9月16日、この試合の退場者5人への処分を発表。ネイマールには2試合の出場停止を申し渡す一方、「ゴンサレスへの告発については、引き続き調査する」と言明した。
その後、ブラジルのテレビ局が「ゴンサレスがネイマールに向かって口を開いたシーンの映像を読唇術の専門家に検証してもらったところ、ゴンサレスが『モノ』と言ったのは間違いないと明言した」と報道した。
一方でスペインのメディアはネイマールがゴンサレスを「マリコン」(同性愛者を侮辱するスペイン語)と呼んだとするシーンの動画を発表する。
両選手のいがみ合いは、各々の出身国のメディアによる代理戦争の様相を呈していく。