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“卑怯”な救済案? 富の集中と異常給与のプレミア、外国人オーナー乗っ取り回避も…
 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/10/22 06:00

“卑怯”な救済案? 富の集中と異常給与のプレミア、外国人オーナー乗っ取り回避も…<Number Web> photograph by Getty Images

圧倒的なクオリティーのプレミアリーグだが、“金のなる木”には危うさもはらんでいる

「救済案」のようでいて実は迫害計画

 そんな改革案をオンライン版ですっぱ抜いた『デイリー・テレグラフ』紙の取材に応え、「我々が誇る強豪のうち2クラブが、先頭に立って行動を起こそうとしてくれている」と語ったのは、PBPの参画者でもあるフットボールリーグのリック・パリー会長だった。

 ところが、プレミアリーグのクラブ経営陣の間でパリー会長の適性が疑問視されるほど顰蹙を買うことになったように、PBPは持たざる者の「救済案」のようでいて、実は「迫害計画」の一面もある。

 パリーによる「プレミアの残る14クラブと、我が(フットボールリーグ所属)クラブとの格差が問題なんだ」とのコメントには、「イングランドのプロリーグは、ビッグ6とその他大勢という構成で構わない」と言えるような本心が透けている。背に腹は代えられない経済的危機でなければ、フットボールリーグでもPBPに難色を示すクラブが増えていたに違いない。

“テレビマネー”の還元方法を一新する策として、すぐにリバプールやマンUの取り分が増えるような仕組みがあったわけではない。

 しかし、PBPは将来的にはより多くの「金」をも引き寄せるための「支配力」を、すぐ握れるようになる変革案になっているのだ。

投票権はビッグ6を中心としたクラブか

 かりにPBPに則ってプレミアリーグが運営された場合、創設当初から決議を採る場合の原則だった「1クラブ1票制」は廃止されて、代わりに継続的な所属年数が最も長い9クラブがより大きな投票権を持つようになる。

 現状で言えば、アーセナル、チェルシー、トッテナム、マンチェスター・シティを含む6強の他に、ウエストハム、エバートン、サウサンプトン。つまり、欧州スーパーリーグ参戦なども噂されるビッグ6は、過半数となる内輪の6票でプレミアリーグとしての意思決定をコントロールできるわけだ。

 その決定権はフットボールリーグの試合も含む放映権契約、契約料の配分、リーグ日程、さらには所属クラブの新オーナー就任に対する承認拒否など多岐に渡る。結果、高視聴率が見込める生中継枠が、今まで以上に強豪クラブ絡みの試合に集中しても不思議はない。

 PBPには、プレミアリーグの所属クラブ数が現行の20から18に減らすことや、シーズン開幕前哨戦に当たるコミュニティ・シールドを廃止すること。また通常8月半ばの開幕時期を遅らせる、などという提案も含まれている。

【次ページ】 最大の恩恵を受けるのはやはり……

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