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ハーランドが「僕が15歳の時より凄い」という超新星もいるのに…ドイツ育成が“赤信号”なワケ
posted2020/10/22 11:01
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
「だから代表戦を誰も見ないんだ!!」
「代表ではベストな選手がプレーするところを見たいんだ!!」
現役時代に「闘将」と称された男が、思わず吠えた。
元ドイツ代表キャプテンのローター・マテウスが、10月7日に行われたトルコ代表との親善試合において、所属クラブではレギュラーを取れていない選手の多くがドイツ代表の先発で起用されたことを問題視した。
ドイツでは、ここしばらく代表戦の人気が下降線を辿っている。コロナ禍の前から観客動員に苦戦している背景もあり、歯痒い気持ちで代表戦を見ている人も少なくない。ただマテウス自身が代表でプレーしていた90年代と現在とでは、ドイツ代表が置かれた環境はかなり違うという事情もある。
世界中で深刻なスケジュール問題
現在、世界中のサッカー界でスケジュール問題は深刻だ。
新型コロナウイルスの影響により、スケジュールは過密を通り越して無謀な感さえある。どの国もシーズンインが例年より遅くなり、国内リーグの日程はただでさえ詰まっている。そうした合間に代表戦が組み込まれているわけだが、同時にコロナ禍で収益が減っている各国協会のためにテストマッチも行われているのだから、身動きができない。
9月の代表戦後、ドイツ代表のヨアヒム・レーブ監督も「このスケジュールでは選手が集まって調整して試合するだけ。練習する時間もない」と批判的なコメントを残していた。来年は欧州選手権とオリンピック、再来年にはW杯が開催される予定だ。
選手のコンディションそっちのけでスケジュールが埋まっていく現在の風潮についてはもっとディスカッションすべきだし、同情の余地がある。
とはいえ、すべてをスケジュールのせいにできない問題が、現在のドイツ代表にはある。マテウスが指摘するように、そもそも所属クラブでレギュラーを取れていない選手に代表チームで出場機会を与える必要がどこまであるかという点は、しっかりと考察されるべきポイントだろう。