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明治・慶應・早稲田・東海に聞いた“待望の開幕”までの時間「ラグビーできなくなったら意味ない」
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byNobuhiko Otomo
posted2020/10/09 17:00
開幕戦で輝きを放った筑波大1年CTB谷山隼太(たにやま・はやた)。福岡堅樹と同じ福岡高校出身で、将来が期待される1人だ
試合じゃなくて試合形式の合同練習
その明大の本拠地・八幡山グラウンドに、開幕を控え、貸し切りバスで出向いたのは慶大だった。
目的はライバル校と「試合形式の合同練習」を行うためだった。ちょっとまどろっこしい名称には事情があった。
例年なら春季大会、招待試合、夏合宿の練習試合と、概ね10数試合は他校と対戦を重ね、自他の力量を測りながらシーズン開幕を迎えるが、今季はそれがかなわない。公式戦の開幕前に他校と体を当てておきたいが、「対外試合」は大学から許可が出ない――。
「合同練習」は、そんな事情から編み出した苦肉の策だったのだ。「合同練習」は正規のレフェリーも呼んで行われたが(実戦から離れているレフェリーにとっても目を慣らす貴重なチャンスだった)、時間を前後半それぞれ正規より10分短い30分に、入れ替え自由、ゴールキックなし。エクスキューズをちりばめた特別ルールで行われたのだった。
その日「合同練習」を終えた慶大の相部開哉(あいべ・かいと)主将は「まだ会えていない1年生が20人くらいいるんですよ」と、ちょっと寂しそうに笑った。前期はすべてリモート授業。9月の入学式は動画配信に切り替わり、キャンパスは閉鎖されていた。
「そんな選手にも、部員の自覚を持ってもらえるように、リーダー陣がZOOMでグループミーティングをしたり、オンライントレーニングをしたりしてました」
移動は自転車、寮生と自宅生の接触は避ける
慶大の寮生が外食を解禁されたのは7月に入ってから。条件はここでも「公共交通機関を使わないこと」。相部は部員数人で元住吉のステーキレストランまで自転車で出かけたが、中には「多摩川を越えて、中目黒まで自転車で行くやつもいましたね(笑)。片道30〜40分くらいかかるけど、それもストレス解消になったみたいですよ」
7月中旬に少人数に分けてチーム練習を再開した際も、約50人いる寮生の部員と自宅生の部員では練習時間を分け、接触しないようにしたという。寮生のグループに参加できるのは、日吉で一人暮らしをしている学生まで。つまり「ラグビー部以外の人とは接触していない部員」に限られた。
自宅生グループの練習に参加するのも、自転車で来ること、あるいは家族がクルマで送ってくれるのが参加条件。公共交通機関を使わないとグラウンドに来られない選手には参加許可が出なかった。感染の可能性を下げるために、周囲の人との接触を可能な限り避けることを目指すには、高いハードルを設定するしかなかったのだ。