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早稲田大学の1年生が夢見るラグビーW杯 金の卵が手にするのはボールじゃなくて“ホイッスル”
posted2020/10/08 17:00
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph by
WASEDA University
早稲田大学ラグビー部に金の卵がいる。今春に高校を卒業したばかりの1年生、古瀬健樹(ふるせ・かつき)だ。ただし手にするものは楕円球ではなくホイッスル。ラグビー界最高の舞台を見据え、憧れていた早大ラグビー部で研鑽を積んでいる。
「ワールドカップのレフリーは常に求め続けていきたいと思っています」(古瀬)
福岡県大野城市出身。中高一貫の東福岡自彊館(じきょうかん)中でラグビーに出会い、主将を務めた3年時は九州大会に初出場し3位になった。
付属中からそのまま東福岡高に進んだが、授業が8時間目まである中高一貫コースだったため、両立の難しさから全国強豪のラグビー部には所属せず。ただ「ルールを調べるのは好きでした」という古瀬は高校1年の春、レフリーを頼まれ東福岡のグラウンドで笛を吹いた。
そこで、たちまちラグビーレフリーの難しさ、奥深さに魅了された。
「ルールが複雑で本当にやることが多いのですが、それが全部できてゲームが成り立ったら面白いだろうなと思いました」
レフリーは良いラグビーのサポート役
ラグビーレフリーは複雑なルールを把握した上で、連続する事象に対応しなければならない。スクラム、ブレイクダウン、キックの応酬……。たえず左右に首を振り、カオスに見える攻防戦から反則を見つけ出す。
しかしすべての反則を厳密にとれば選手のフラストレーションが溜まり、エンターテイメント性も失われる。ラグビーレフリーは良いラグビーを作るサポート役であり、コミュニケーションを通して反則の少ないゲームをマネジメントしていく。
時には1チーム15人、計30人の屈強なラガーを向こうに、毅然とした態度で対応する精神力も必要になる。また両軍のチームスタイルを調べておくなど、試合前の準備も欠かせない。レフリーの情報不足がゲームの妨げになってはならないからだ。
もちろん身体能力も重要だ。選手が独走すれば切り返して追いかけ、インゴールでトライの笛を響かせる。トップレベルになると1試合の走行距離が6、7キロにもなり、持久力も必須となる。