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味スタ観衆1/5000人になってみた。
ナオの“予言”と室屋の名スピーチ。
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph byYoshiaki Matsumoto
posted2020/08/21 20:00
この試合を最後にドイツへ旅立つ室屋へ暖かい“拍手”を送るFC東京サポーター。
「良いプレーには積極的に拍手を」
さて、前述の『観戦マナーについて』には、こうも書いてある。
「試合中に自然に発生する声や拍手は禁止されていません。良いプレーには積極的に拍手していただき、選手の後押しをお願いいたします」
レアンドロの得点シーンに限らず、騒いじゃいけないとわかっていても、好プレーが生まれた時には、やっぱり声が出ちゃう。マスクの下で「おぉぉぉぉ!」の後に、拍手、拍手。静かな図書館だと読書に没頭できるのと同じように、騒音がない分、観衆の誰もが目の前のプレーに集中して、良いプレーには拍手で賛辞を送りたくなる。
海外でプレーする日本人選手たちはよく「ヨーロッパの観衆は、日本のお客さんよりサッカーを知っている。だから拍手のタイミングも上手」と言うけれど、そんなことはない気がする。集中して観戦する味スタのサポーターは、難しい回転のボールをぴたりと止めたアルトゥール・シルバのトラップや、ボールを失った瞬間にすぐさま体を寄せてカウンターを阻止した高萩の守備など、隠れファインプレーを見逃さず、すかさず拍手を送っていた。
観衆の優しさに背中を押されて。
要所で万雷の拍手が沸き起こる反面、罵声やブーイングはない。
だから、この日の味スタは、とても“優しい”空間だった。
正直、無観客で行なわれていた頃の試合は、選手たちの主審への抗議の声が飛び交い、ぎすぎすした印象だった。ところが今は、ファウルを受けてもすぐに立ち上がる選手に拍手が送られ、ミスをしても全力でボールを奪い返そうとする選手にも拍手。ポジティブな拍手の音が、選手たちの無用な怒りを鎮め、観衆の“優しさ”に背中を押されてスムーズに試合が流れていく。