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若き天才監督ナーゲルスマンの思考。
CL準決勝でトゥヘルと運命の決戦。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/08/18 19:00
いわゆる“ラップトップ”型監督が台頭しているブンデスリーガだが、ナーゲルスマン監督はその中でも図抜けた存在になりつつある。
20歳で選手生活に見切りをつけたが。
現役時代は1860ミュンヘンの育成アカデミーでプレーし、1860ミュンヘンU23、その後アウクスブルクU23でプレーを続けたものの、怪我の影響もあって20歳のとき選手生活に見切りをつけざるを得なかった。
指導者の道を歩み始めたナーゲルスマンは2010年、ホッフェンハイムU17アシスタントコーチに就任。翌年には監督のポストに就いた。さらにU19チーム監督となり、2014年に歴代最年少監督としてU19ドイツ優勝を果たした。
ナーゲルスマンがトップチームの監督へと昇格した2016年2月、チームは残留不可能と思われるほどの状況だった。
しかし、ホッフェンハイムSD(スポーツ・ディレクター)のアレクサンダー・ローゼンは「ユリアンはこの状況で責任を担う意思があるだけではなく、それを達成できる能力を持っている。チームに新しいインパルスを与えてくれるだろう」と全幅の信頼を口にしていた。
その言葉通りチームは息を吹き返し、見事に残留を達成。さらに上昇気流に乗り、監督2年目にヨーロッパリーグ(EL)、3年目にCL出場権を獲得するクラブにまで成長した。
2年前の講習会で聞いた指導理念。
2018年、そんなナーゲルスマンがドイツサッカー協会公認A級・プロコーチライセンス保持指導者を対象とした国際コーチ会議で講義を担当し、自身のサッカー哲学、指導理念などを明かしてくれた。
「私は次の試合で対戦する相手チームの長所と、そのための戦術的プランから(ベンチ入り)メンバーとスタメンを決める。例えば、ボールを保持する志向のある相手であれば、プレッシングをどう仕掛けるかがポイントと考えられるし、主導権を握ることが勝利のために重要になる。
そうしたゲームプランに応じて攻守のバランスを探っていく。もし、スタメンに守備的な選手を多く起用した場合は、ベンチに攻撃的な選手を多めに備えておかなければ、素早く対応することができない」
アトレティコ・マドリーとのCL準々決勝においても、ナーゲルスマンのそうした狙いが見てとれた。