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若き天才監督ナーゲルスマンの思考。
CL準決勝でトゥヘルと運命の決戦。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/08/18 19:00
いわゆる“ラップトップ”型監督が台頭しているブンデスリーガだが、ナーゲルスマン監督はその中でも図抜けた存在になりつつある。
ベルナーがいないにもかかわらず。
ライプツィヒはフルメンバーだったわけではない。今夏、チームのエースだったドイツ代表ティモ・ベルナーがプレミアリーグのチェルシーに移籍。契約で、アトレティコ戦は出場しないことが取り決められていた。
シーズン28得点を決めたエースがいないとなると、どんなチームでもその穴を補完することは難しい。だがナーゲルスマンは怯むこともなく、動じる姿勢も見せずに、明確な対策でこの試合に臨んだ。
前線で汚れ仕事ができるキャプテンのポウルセンを1トップで起用し、タイミングよくパスを引き出すことができるオルモと、スペースに飛び出していくことができるヌクンクをトップ下に並べた。
シンプルに捉えられる原則を。
さらに戦術理解度が高く、状況に応じたポジション取りがうまいザビツァーとライマーを変則的なポジションで起用して、揺さぶりをかける。これがうまくはまった。欧州トップクラスの守備力を誇るアトレティコ・マドリー相手にチャンスを作り出した。
「試合のとき、私は自分からダイナミックにアプローチして流れを変えようとしている。そのためにはまず、チーム内で戦術的な哲学をはっきりと持ち、それをチーム内で正しく共有することが必要だ。そして、そのために大事なのはプレー原則を明確に定めることだ。シンプルに捉えることができるルールがいい」
主導権を握りながらも決定打を欠いた展開を変化させるべく、ナーゲルスマンはさらに動く。72分に最初の選手交代。しかし、交代選手は控え選手ではない。ナーゲルスマンは講義で強調していた。
「ベンチに座っている選手は時間稼ぎのためにいるわけではない。交代でピッチに入り、試合に影響を及ぼすことができる存在なんだ。それが期待できない選手なのだとしたら、なぜ、ベンチに入れているのか。なぜ、試合に影響を及ぼせるような選手に導かないのか。そうした見方が必要ではないか」