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豊ノ島の引退で考える「関脇」問題。
初昇進から1年の成績が未来を占う?
posted2020/07/04 11:30
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph by
Kyodo News
少し前の話になるが、豊ノ島が引退した。
角界でも屈指の人気者であり、バラエティ番組などでも目にする機会の多かった力士だ。最近では白鵬と遠藤、強いて言えば炎鵬くらいしか一般知名度のありそうな力士がいないことが相撲ファンとしては寂しい限りだが、豊ノ島については知っているという人が意外なほど多い。これは彼の土俵外での存在感の大きさを物語っている。
豊ノ島の凄さは、メディア出演と成績が反比例しない点にある。
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本業への影響を懸念してテレビ出演を断る力士もいる中で、豊ノ島は休場中はメディアに出ていても、本場所になればしっかり結果を残す。上位で戦いながら大相撲の広報役まで果たすのだから、これほど貴重な力士はそういない。
そんな豊ノ島のキャリアで有名なのは、2010年九州場所の白鵬との優勝決定戦と、2016年初場所で琴奨菊に勝った一番だろう。
最高位が関脇の力士であれば、格上力士に番狂わせを起こした取組が記憶に残りそうなものだが、豊ノ島は複数回優勝争いに絡んでおり、その場所の印象が強い。
豊ノ島の爆発力は平均の4倍。
豊ノ島の成績で興味深いのは、11勝以上の場所、つまり大勝ちの比率が非常に多いことだ。関脇以下の力士全体の成績では、11勝以上する比率は全場所の5%程度である。関脇以下で1場所あたり2名程度と考えると想像しやすいと思う。
しかし豊ノ島は、この数値がなんと20%を超えているのである。
一般的な関脇以下の力士と比べて大勝ちの比率は約4倍。言い換えると、1年に1度以上は印象的な活躍をすることになる。豊ノ島の爆発力が突出していることがわかる。