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「これはまずい」学生の朝帰り、だらけた雰囲気…それでも青学大・原晋監督が見逃さなかった“ある変化”「今の生活を変えたい」選手が宣言した日
posted2025/01/03 06:01
text by
原美穂Miho Hara
photograph by
JIJI PRESS
原晋監督、そして学生たちを支えるのが、寮母を務める原美穂さんだ。寮母という立場から青学の強さの秘密を解き明かす、原美穂さん著『フツーの主婦が、弱かった青山学院大学陸上競技部の寮母になって箱根駅伝で常連校になるまでを支えた39の言葉』(アスコム刊)から、「自律したチームの作り方」に関する章を抜粋して紹介します(全3回の2回目/#3につづく)。
ルールは守る人に決めさせる。
「自分たちが決めた」と思えるように仕向けることが大切です。
◆◆◆
監督も初心者、寮母も初心者、そして学生も共同生活の初心者。2004年春、初心者だらけで寮生活が始まりました。
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今でこそ、夜10時という門限がありますが、最初は完全にフリーな状態でした。飲みに出かけて、午前2時ごろに帰ってくる学生もいました。そう気がついたのは、起きて待っていたからではありません。寮内の「原家」は玄関脇にあるので、夜中に帰ってきた学生が玄関のロックを解除するため、暗証番号を入力する「ピッ、ピッ」という音が聞こえていたのです。特に2年生から4年生の中には、それまで一人暮らしをしていた子が多く、習慣を変えるのはむずかしかったと思います。
そうやって夜遊びをして帰ってきた子は、当然のことながら、翌朝の練習に遅刻します。間に合ったとしても、ぼーっとして身が入らないこともあります。
「これはまずいのではないか」寮母の心配も監督は…
わたしはほかの大学がどんな練習をしているのか知りませんでしたが、でも、さすがにこれではまずいのではないかと思うようになりました。箱根駅伝のすごさを知らないわたしの目にも、彼らのだらけた雰囲気は、それを目指す学生の生活には見えなかったからです。
監督はというと、あまり気にしていないようです。というのも、大学時代はゆるい練習をしていたらしく、本格的に練習したのは実業団の中国電力に入ってから。実業団ではみんな走ることが仕事、走れなくなったら辞めなくてはならなくなるかもしれないという意識を持っているので、自分に厳しく、追い込んだ練習ができるようなのです。