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豊ノ島の引退で考える「関脇」問題。
初昇進から1年の成績が未来を占う?
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2020/07/04 11:30
豊ノ島というと、2010年の優勝決定戦で白鵬に敗れた一番の印象が強い。周囲の拍手が彼の奮闘を物語っている。
逸ノ城は苦戦中、楽しみな正代。
一方で逸ノ城は、関脇での二桁勝利経験が実はまだ無い。上位総当たりの地位で成績を出せるかが、現在の壁になっているのかもしれない。
興味深いのは正代だ。
関脇昇進までは壁らしい壁を経験すること無く昇進してきたものの、上位総当たりでは力及ばず番付を落としてしまう「エレベーター」的な力士だった。しかし今年の大阪場所で、関脇として初めての勝ち越しを決めた。初の関脇昇進から3年半の歳月を経て、確かな実力が身に付いてきたと言える。
関脇の最年少が27歳?
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全体の傾向として気になるのは、若手で関脇経験のある力士が少ないことだ。
現時点で関脇経験がある力士の最年少は23歳の貴景勝、それに26歳の朝乃山と現大関が続き、次は27歳の逸ノ城である。本稿では関脇が厳しい地位だというデータを紹介してきたが、それ以前に関脇に昇進する若手力士自体が少ないのだ。
貴景勝と同世代の阿武咲が小結まで昇進しているが、阿炎のように4場所連続で小結に在位しながらも上位の関脇陣が勝ち越して昇進できなかったケースもある。また大栄翔は上位総当たりの番付が7月には8場所連続となり、そのうち4場所で勝ち越したにもかかわらず関脇には昇進できていない。
関脇になるのが難しく、関脇に踏みとどまるのも難しいのが令和2年の現実だ。だが、世代交代を果たすにはその壁を誰かが越えなければならない。