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豊ノ島の引退で考える「関脇」問題。
初昇進から1年の成績が未来を占う?
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2020/07/04 11:30
豊ノ島というと、2010年の優勝決定戦で白鵬に敗れた一番の印象が強い。周囲の拍手が彼の奮闘を物語っている。
関脇での勝ち越しが一度もない理由は?
しかし意外なことに、豊ノ島は関脇で5場所を戦いながら勝ち越しは一度もない。
小結では8場所を戦っており、そのうち3場所勝ち越しているので決して上位で勝てない力士というわけではなく、巡り合わせもあった。
豊ノ島が関脇で迎えた場所が多い2008年から2012年は、日馬富士や把瑠都、琴奨菊に稀勢の里、そして鶴竜と大関昇進が相次いでいる。最終的に6大関となったうえに、その下には豪栄道や栃煌山といった実力者もひしめいていた。
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その力士たちを相手に1場所勝ち越すだけでも立派だが、関脇として結果を残し続けるのはさらに難しい、ということだろう。
番付が上位になればなるほど、昇進するには実力だけでなく巡り合わせも重要になる。小結で勝ち越しても関脇が落ちてこなければ上がれないこともあるし、上位が揃って負け越して前頭5枚目がいきなり関脇に昇進ということもある。地位を守ることが難しいのが関脇という地位なのである。
関脇で勝てない力士は実はとても多い
関脇の成績の特徴は、以下の4つのタイプに分類できる。
1.関脇で勝ち越し経験が無い力士
2.関脇で勝ち越し経験はあるが二桁勝利経験が無い力士
3.関脇で二桁勝利経験はあるが大関に昇進していない力士
4.大関に昇進した経験のある力士
昭和33年以降の入幕で関脇に昇進した経験がある力士は136人いるが、内訳としては1が38名、2が22名、3が16名、4は60名である。
1には、豊ノ島に加えて先代の栃東や「ホラ吹き金剛」という愛称で親しまれた金剛、優勝経験者で言えば、琴富士や旭天鵬もこれに該当する。
2のリストを見ていくと、オールドファンには懐かしい明武谷や若秩父、昨年亡くなった逆鉾、現在は親方の栃乃和歌や水戸泉、嘉風もこれに該当している。
関脇が通過点という力士であればともかく、多くの力士にとって関脇は生き残ることも難しい地位なのである。