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内村航平、哲学を貫き鉄棒に専念。
オリジナル技「ウチムラ」の可能性。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byYohei Osada/AFLO SPORT

posted2020/07/04 20:00

内村航平、哲学を貫き鉄棒に専念。オリジナル技「ウチムラ」の可能性。<Number Web> photograph by Yohei Osada/AFLO SPORT

昨年4月の全日本選手権では両肩痛の影響から予選敗退した内村。得意の鉄棒に絞って心身の充実をはかり、東京五輪出場を目指す。

高難度技の習得に精神的な救いを求めた。

 ゾンダーランドの演技は多少の粗さがあるが、とにかくインパクトが強い。そして華やかさがある。

 会場の視線を一身に集め、空気まで変えてしまうのは内村も同じだが、ゾンダーランドが創り出すエンターテインメント感あふれる盛り上がりには、素直に脱帽している様子だったのだ。

 鉄棒といえば、内村はリオ五輪後に襲われたモチベーションの低下を払拭するため、高難度技である「ブレットシュナイダー」の習得に精神的な救いを求めたことがある。

 ブレットシュナイダーとはコバチに2回ひねりを加えた技で、難度はH。'18年のインタビューでは、「最近は面白くないのが常になっている」と苦笑いしながら、こんな悩みを口にしていた。

「ウチムラ」の名のつく技への意欲が芽生えるかも。

「ここまでくると、やる技も今までやってきたことをやるだけ。だからブレットシュナイダーは特例と言うか、新しく取り組んでいる技なので、楽しみは本当にあれぐらいしかないんですよね」

 種目を鉄棒だけに絞ることによって、内村には、自身初となる「ウチムラ」の名のつく技への意欲が芽生えるかもしれない。つり輪や平行棒を行なうときに伴う肩痛の苦しみから解放されることで、練習そのものが楽しく感じられるようになれば、どんな領域にたどり着くのだろうか。

 今年2月には、自身のインスタグラムに、オーストラリアでの合宿でゾンダーランドと会い、一緒に試技会に出たことを報告。2ショット写真を上げ、「とても刺激をもらえた」とコメントしていた。もしかすると今回の決断に何かしらの影響があったのかもしれない。

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