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五輪延期は日本スケートボード界に
とっては明るい材料!? その理由とは。
text by
吉田佳央Yoshio Yoshida
photograph byYoshio Yoshida
posted2020/04/29 08:00
ライバルの堀米雄斗が見つめる先でトリックをメイクするナイジャ・ヒューストン。彼は堀米より4歳年上になるが、1年後の伸びしろは果たして……。
女子にはまだまだ世界に有力な若手が。
では、他の種目に目を向けてみるとどうだろうか。
男子ストリートに関しては、前述のように世界ランクトップ20の中では16歳の青木勇貴斗が最も若いことから、伸びしろも十分にあるのだが、女子ストリートとなると少し事情が違ってくる。
現状では18歳の西村碧莉が日本の不動のエースに君臨しており、来年も十分な活躍が期待できるのは間違いない。
しかし、世界では彼女よりさらに下の世代の突き上げが凄まじく、新たなうねりとなっているのもまた事実だ。
中でもブラジルのライサ・リールは日本勢の最大のライバルになりうる。
昨年のSTREET LEAGUE SKATEBOARDING ロサンゼルス大会で初優勝を飾り、一躍世界のトップに躍り出た彼女は、現時点での世界ランクも2位と西村碧莉の上をいっており、十分にメダルを射程圏内に捉えているだけでなく、年齢もわずか12歳という驚きの若さだからだ。
ストリートはパーク以上に体格や筋力が影響する種目なので、スキルだけでなく体格でも成長の余地を残す年齢の場合、1年という期間でも急激なスキルアップが見込める。
よくフィギュアスケートではジュニアからシニアに転向していきなり優勝するという光景を見るが、スケートボードもそれと同じような現象が起こりつつあるのだ。
そのことから“幼い”というのが、とてつもなく大きなアドバンテージになる可能性があることは、伝えておきたい。
ただし、年齢だけでいうなら世界ランキング11位の織田夢海や18位の西矢椛の日本勢もライサ・リールとは同学年なので同じことが言える。
日本としては、西村碧莉のさらなる進化はもちろんのこと、国内のネクストジェネレーションたちの急成長にも期待したいところだ。
明るい未来へ向けて――。
ここまでスケートボードの各種目における現状をもとに未来予想図を描いてきた。
今はまだオリンピックの1年延期が決まっただけであり、今後の成り行きにも大きく左右されていくことだろう。
これまでに獲得したポイントがどうなるのかにもよるし、新型コロナウイルスの収束にどれくらい時間がかかるのかにもよるだろう。
未来がどうなるのかは誰にもわからない。
今年の年明けの新型コロナウイルスの蔓延とオリンピックの延期を誰が予想できただろうか。
今は暗い話題ばかりが先行する世の中ではあるが、そんな時だからこそ来たるべき明るい未来に想いを馳せて過ごしていきたいと思う。
スケートボーダーは、どんな時であろうともポジティブシンキングとクリエイティビティを失わずに進化し続けてきた。
だからこそ、スポーツですらなく、街中の遊びだったものがオリンピック競技になるまでに発展できたのだろう。
そんなスケートボードが起こしてきたミラクルの続きは、新型コロナウイルスで沈んだ経済に刺激を与える起爆剤であってほしいと切に願う。