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大黒将志の運命を変えた1ゴールと、
背番号「31番」掛布との思い出。
posted2020/04/21 18:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Asami Enomoto
将来を見据えて、点と点をつなぎ合わせることはできない。できるのは、あとで振り返り、それをつなぎ合わすこと。いずれ人生のどこかで点と点はつながり、実を結ぶと信じなければいけない――。
15年前、米国スタンフォード大学卒業式のスピーチでアップル創業者、故スティーブ・ジョブズ氏が残した名言である。
時を同じくして、人生を変えるゴールを決めた大黒将志のキャリアを言い当てているようである。2005年2月9日、ドイツワールドカップ・アジア最終予選の初陣となった北朝鮮戦でアディショナルタイムに決勝ゴールを叩き込み、ジーコジャパンの救世主となった。久保竜彦の代役として追加招集されたガンバ大阪のFWは、一夜にして“日本代表の大黒”として世間に認知された。
あのゴールから15年が経ち、大黒は言う。
「確かに、あれは運命の一撃やったと思う。波及効果はすごかったから。ただ、いま思い返せば、人生のターニングポイントとなったゴールは、ほかにもあるんです」
「いつチャンスがくるのか、分からんもんです」
2002年にチュニジア代表から奪った一発は、すぐに頭に思い浮かぶ。国際Aマッチでもなければ、公式戦でもない。日韓W杯前に万博記念競技場で行われた練習試合である。
当初の予定はベンチ外。当時22歳の大黒は期限付き移籍していたコンサドーレ札幌からガンバ大阪に戻ったばかりで、定位置も確保しておらず、日本代表ははるか遠い場所だった。この試合もスタンドから見守るつもりだったが、先発メンバーの1人にアクシデントが起き、急きょベンチ入りのチャンスが巡ってきた。
「そこで西野朗監督(現タイ代表監督)に15分くらいチャンスをもらって、点を決めたんです。ワールドカップに出場する代表チームからゴールを奪ったのは自信になりましたね。これはJリーグでもいけるわって。
それから、ナビスコカップ(現・ルヴァンカップ)、リーグ戦でも点を取りました。あのときはあとがなくて、ここで決めなアカンと思っていました。立場も状況も、あの北朝鮮戦と同じような感じでしたね。いつチャンスがくるのか、分からんもんです」