ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オシム、コロナ禍の欧州から魂の言葉。
「私はまだ働きたい。ジェフの……」
posted2020/04/22 11:50
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
イビチャ・オシムと電話で話したのは先月のこと。ヨーロッパではコロナウィルスの影響が深刻化し、すでに各国が非常事態を宣言して日常生活に大きな制約を加えていた時期ではあったが、日本にはまだそこまでの危機意識がなかったころだった。それから時間がたち、日本の状況も大きく変化した。
オシムはこの新型コロナウイルスによる社会をどう捉えていたのか――タイムラグを経てもなお心に直接響いてくる彼の言葉に耳を傾けよう。
「今はこちらの方が日本よりも深刻だ」
――元気ですか?
「ああ、君らはどうだ。いろいろ問題があって、あらゆる活動が停滞している」
――その通りです。
「問題は本当に多い。こちらは移民も多く、人が移動するからなおさらだ。避けるための手段が多くあるわけではない。危機は徐々にだが着実に迫っている。誰もが買いだめをはじめ、自分の関心にばかり囚われて他人を気にしない。そこから問題が生じている。何をやって、何を食べればいいのか。テレビもそうしたことに囚われている。
日本もやはり試合は中止になっているのか?」
――リーグも中断したままですし、国際試合も中止になりました。
「ボスニアも状況は同じだ。代表も北アイルランドとのEUROプレーオフが延期された。街中はどの店も閉まっている。これからどうなっていくのか。ボスニアリーグも次節が中止になった。再開の日程を調整しているが、目途は立っていない。というのも目前に迫っていた代表戦の方がずっと大事で、そちらが決まらないことにはリーグの日取りも決められないからだ。
世界のどこでも問題を抱えている。(自然災害などは)日本の方がずっと多いが、今はこちらの方が日本よりも深刻だ。総体的な危機であるからすべての国境を閉鎖せねばならない。ボスニアは中国ほど広大ではないからそう難しくはないが、ヨーロッパ全体ではまだまだ多くの国境が開かれたままで、人々の行き来が可能だ。危険を回避するためにはすべてを閉鎖する必要がある。
それで君はどうなんだ?」