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こういう事態に何ができるのか。
スポーツクライミングの現在(いま)。
posted2020/04/30 11:00
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
AFLO
「スポーツクライミングがこういう事態に何ができるのか。社会のなかでどういう役割があって、どんな影響を与えられるのか。普段は時間がなくてなかなか考えられないテーマを、選手たちと毎日のように話をしています」
そう語るスポーツクライミングの日本代表を率いる安井博志ヘッドコーチの声は、電話口からも力強さが伝わってくる――。
世界中で甚大な被害をもたらしている新型コロナウイルス。スポーツ界への影響も大きく、3月24日に東京五輪の開催延期が決まったのをはじめ、国内外のあらゆるスポーツイベントは休止が続いている。
スポーツクライミングにも影響は及んでいる。国際大会は4月から開幕するはずだったが、2月の時点でW杯ボルダリング 中国大会のキャンセルが決まり、その後にすべての大会が延期になった。
国内大会も2月に『ボルダリング・ジャパンカップ』と『スピード・ジャパンカップ』は開催できたものの、3月に予定されていた『リード・ジャパンカップ』の開催は見送り。3月以降に予定されていたユース年代大会やスピード記録会、各都道府県大会なども相次いで延期となり、現在はすべてのスケジュールが白紙状態となっている。
クライミング自粛の中、できることは?
7都府県に緊急事態宣言が発令されてからは、街なかのクライミングジムはほとんどが休業し、多くの岩場でもクライミング自粛が求められている。そうしたなか日本山岳スポーツクライミング協会も事務局を閉鎖してテレワークに移行した。
例年なら4月上旬にスイス・マイリンゲンでW杯ボルダリングが開幕してからは国際大会のために国内外を慌ただしく飛び回る安井ヘッドコーチは、今年は地元・鳥取で過ごしているが、WEB会議などで「国際大会のあるシーズンよりも忙しない」と明るく話す。
「こういう状況ですので、一日に何人もの代表選手からヒアリングをします。体調のこと、トレーニングのことなど、内容はいろいろですね。毎日の検温や、外出自粛、トレーニングは自宅でできるものをしっかり継続するように指示しています。ひとりの選手と1時間以上は話しをするし、協会スタッフなどとのWEB会議もあるので、時間はあっという間に過ぎてしまいます」