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無名の選手をドラフト候補に育てる。
城西国際大で育つ投手の才能たち。
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![安倍昌彦](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/04/21 20:00
![無名の選手をドラフト候補に育てる。城西国際大で育つ投手の才能たち。<Number Web> photograph by Kyodo News](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/700/img_36bf671b53f474726476f393da655e63149443.jpg)
城西国際大学の中島隼也、2020年ドラフトでも有望な4年生ピッチャーである。
仙台育英出身の中島隼也。
今年はといえば、「投」の二本柱として舘和弥、中島隼也の4年生右腕が残っている。昨年のリーグ戦春・秋連覇の牽引車となったのも、この2人だ。
「春」は中島隼也がチームを背負って、リーグ優勝に持ち込んだ。
リーグ戦全11試合のうち9試合を投げて、チーム8勝のうち6勝の働きは、ほとんどひとり舞台。リーグMVPもベストナインも当然の結果だった。
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コロナがこんなになる前、2月の練習の紅白戦で投げた中島投手の「初球」が素晴らしく、印象に残っている。
右打者の外角低め、構えたミットにピシャリきまった快速球。初めにそこまで精緻なコントロールを見せておいたので、打者はそのあと内角のボール球に手を出して、内野フライに打ち取られた。
初球の“凄み”で打者にプレッシャーをかけておけば、その後はストライクにこだわらなくても、ボール球で危なげなく打ち取れる。試合を作れる「実戦力」が伝わった。
こういう投げ方ができるのだから、春6勝、秋5勝、昨季11勝の急成長もすっきりうなずける。
これほどの投手が、仙台育英高では甲子園のマウンドで投げる機会を得られなかった。大学でも2年の春に交通事故に遭って半年近いブランクがあり、そこから這い上がってきたのだから、昨季3年生での「大奮投」は値打ちが高い。立派だと思う。
投手の武器は派手なのがいいわけじゃない。
そして、城西国際大の右腕コンビの“相方”・舘和弥が頭をもたげてきたのは秋だ。
昨年の秋の千葉リーグでは、舘投手4勝、中島投手5勝の合計9勝で、城西国際大は相手5チームすべてから勝ち点を奪う「完全優勝」を成し遂げている。
中島投手が、145キロ前後の快速球と130キロ台の必殺チェンジアップでガンガンいくのに対し、舘投手は長身のオーバーハンドから低めに速球、ツーシーム、カットボールを集める投球で、バットの芯を外しながら丁寧に投げ進める。
球筋に角度があって、しかも目から遠い低めでわからないように動く。だから、打者は打ち取られた理由がよくわからず、次の打席でもやられてしまう。 投手の「武器」は、豪快なのも派手で見映えがするが、わかりにくいほうがもっと長く、よく効くように思う。
この舘投手はというと、高校時代は2番手以下だったと聞いた。
当時の平塚学園には、高田孝一(現・法政大)という「絶対的エース」が君臨していた。それが、わずか4年経った今、「ドラフト候補」という同じ土俵に上がっているのだから、若者が地道にコツコツ努力した時の「ちょっと先」など、誰にもわからない。