マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
無名の選手をドラフト候補に育てる。
城西国際大で育つ投手の才能たち。
posted2020/04/21 20:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
活動自粛が解禁になったら、真っ先に見に行ってみたいな……と楽しみにしているチームが、全国にいくつかあって、最近はそんなことばかり考えている。
その1つが、「城西国際大学」という千葉の静かな場所にある、まだあまり有名ではないが、先の楽しみなチームなのだ。
昨年は、春の「千葉県大学野球リーグ」を8年ぶりに制覇して、6月の全日本大学選手権に進み、秋もリーグ戦で優勝。
関東地区の大学リーグ戦を勝ち上がった優勝校同士で行う「明治神宮大会」の予選も勝って「本戦」でも広島経済大を破り、一躍全国レベルのチームに台頭してみせた。
城西国際大の佐藤清監督と、投手担当の道方康友コーチ。
この2人の熟練指導者と私は早稲田大学野球部の同期生にあたり、野手の指導を担当する田中成明コーチも早稲田大学野球部の出身なのだが、決して「エコひいき」で取り上げるわけじゃない。
高校時代は無名だった選手たちが……。
このチームが楽しみなのは、高校時代に全く無名だったり、なかなか陽の目を見なかったのに、人知れずコツコツと努力を重ね、何年後かには「ヘェー!」と驚くような成長を遂げる選手が何人もいることだ。
本来、学生野球の楽しみとはこうした選手たちの「予期せぬ変身」が大きな範囲を占めるものだが、その傾向が特に顕著に思えるのが、この「城西国際大」である。
去年は、岸添有哉という外野手がいた。
170cm74kg。小さな体で左打席から右中間のいちばん深い所へ140m近い大アーチをかけて、そりゃあビックリさせてくれたものだ。
そうかと思うと、リリーフ投手の代わりばなに、その初球を痛烈なピッチャー返しで足元を襲い、たった1球でリリーフ投手の心理をガタガタに崩してもみせた。
千葉・生浜高校という学校は、彼を通じて初めて知った。足も速いし強肩だし、こいつは「近本2世」だ! と楽しみにしていたら、この春めでたく卒業し、なんと一般就職したと聞いて驚いた。人それぞれ、行く道もまさにそれぞれである。