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J1鳥栖と金明輝が掲げるクラブ方針。
18歳松岡大起が「希望」である理由。
posted2020/02/22 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
J1開幕よりひと足先に開幕したルヴァンカップは、U-21世代の選手のスタメン起用の規定を設けるなど、リーグ戦の出場機会が少ない若手に経験を積む貴重な場としての側面を持っている。
だが、2月16日のグループステージ初戦はリーグ戦開幕の約1週間前とあって、どのチームもベストメンバーに近い編成で臨んできた。
筆者は駅前不動産スタジアムで行われたサガン鳥栖vs.北海道コンサドーレ札幌の一戦を取材したが、そのなかで18歳の鳥栖MF松岡大起のプレーに心を奪われた。18歳とは思えぬ高い戦術理解度とプレーの質。時には激しいアクションを加えながら、周囲と意思疎通を図っていたことに驚いたのだ。
ルヴァン初戦で起用した2人の18歳。
松岡は鳥栖U-18出身。昨季、高校生ながらJ1第2節のヴィッセル神戸戦で先発フル出場。その後もコンスタントに出場を重ね、リーグ23試合に出場、うちスタメンは21試合とチームの主軸として活躍した。
実質プロ2年目となる今季の初戦、前述の札幌戦では4-3-3の肝であるダブルインテリオールの一角としてスタメン出場。しかもコンビを組んだのは、鳥栖U-18の同級生であるMF本田風智。松岡を起用すれば、U-21選手の規定がクリアできる中で、もう1人の18歳が起用された。この積極的な采配をしたのは、チームを率いる金明輝監督である。
そもそも金監督は「育成畑」の指導者だ。2011年に鳥栖で現役生活を終えると、翌年に鳥栖アカデミースタッフに就任。'14年から'15年までU-15の監督、'16年からはU-18の監督を務めてきた。育成年代の指導に優れる金監督は、4-3-3のシステムで連動して崩すアタッキングフットボールを掲げ、そこにハードワークの精神と状況に応じた守備陣形の構築、奪ってからの攻撃の強度に徹底的にこだわってきた。
その関わりはサッカーだけに留まらず、龍谷高校との提携や寮での英会話レッスンを設けるなど、育成環境をソフト、ハード面の双方から整備。「育成型クラブ」と名乗れる礎を作った。そんな人物がトップチームの指揮官に抜擢されたのだ。