“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J1鳥栖と金明輝が掲げるクラブ方針。
18歳松岡大起が「希望」である理由。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/02/22 08:00
高校3年生だった昨季から出場機会を得ている松岡大起。今季はさらなる飛躍が期待されている。
松岡らを優遇しているわけではない。
「ベテランの力は絶対必要なのは間違いありません。ですが、おっしゃる通り、“中間層”の選手がごそっと抜けた。世代間バランスは正直、良いとは言えません。
でも僕が監督をやる以上、クラブの方針は大切にしないといけませんし、我々の選手には力がある。今季は編成も含め、求めたサッカーはこの形。札幌戦では松岡や本田を始め、大卒ルーキーや新加入選手が多く出場しましたが、僕の仕事はあくまでチームを勝たせること。攻守一体となってアグレッシブに運動量を求めていくサッカーなので、そういう意味ではこのメンバーが僕の中で現時点でのファーストチョイスでした。
これが今後の指針になるとも思うので、ベテラン選手たちがこれを受けてどう奮起するか、若手選手が(得たポジションを)奪われないようにどう成長をするのか。そうすればスタメンは自ずと変わっていきますし、僕の頭をポジティブな意味で悩ませてくれると思います」
育成組織出身の選手を優遇しているわけではない。チーム編成、クラブフィロソフィーの具現化、そして結果という3つの明確な柱から方向性を打ち出し、現有戦力である選手たちに提示したと言える。
「僕の中でこの試合はトライでした。キャンプを通してできるだろうという手応えを感じていました。ただ、結果がついてこなかったので、これで良しとすることはできません。0-3なので、もどかしさもあります。継続する部分は継続して、改善しながら、より勝てるチームにしていきたいと思います」
「自分から発信、体現する責任がある」
クラブはまさに転換期を迎えている。その中で冒頭で触れた松岡の存在は、やはり大きな「希望の光」となるだろう。松岡本人もそれを自覚する。
「年上の選手に任せるのではなく、僕らが積極的に声を出していこうと話をしていますし、下の選手が盛り上げることで上の選手も声をかけてくれる。僕はユース年代も含めて明輝さんのサッカーを経験している分、ハードワークを厭わず、ボールを奪われてもすぐに切り替えて奪い返すという気持ちを見せないといけないと思っています。試合でも練習でも、自分から発信しないといけないし、体現していかないといけない責任がある。若いとか言っていられない」
18歳の若者が、チームの歪な編成を埋めるように“中間層”として立候補しているように見えた。
その隣に並んだ本田もまた、堂々たるプレーぶりだった。彼を指導してきたU-18田中監督は言う。