“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J1鳥栖と金明輝が掲げるクラブ方針。
18歳松岡大起が「希望」である理由。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/02/22 08:00
高校3年生だった昨季から出場機会を得ている松岡大起。今季はさらなる飛躍が期待されている。
2人の起用は、理解者であるから。
フォーメーションはU-18時代と同じ4-3-3。前からアグレッシブにボールを奪い、ワイド、インサイドとスペースを巧みに使い分け、スピーディーにゴールに迫っていく。結果は0-3の敗戦だったが、内容には進化が見られた。後ろを重くしてカウンターを仕掛ける昨季の戦い方とは大きく異なる。
「ポジションごとの役割、ハードワークの質など、そこをU-18出身の選手が体現し、それを周りが見て、それぞれの特徴をこのサッカーの中で活かす考えを生み出して、競争に発展して欲しいと思っています」
金監督が語ったように、ようやく下部組織でやってきたサッカーを“プロ仕様”として披露できるシーズンがやってきた。いきなりチーム全員に浸透させることは厳しいからこそ、自身のフィロソフィーの理解者である選手をピッチに配置しないといけない。つまり、松岡や本田は「U-21世代の選手だから」ではなく、金監督の考え方を体現できる存在として起用されていたのだ。
同時に新戦力も多く起用した。左ウイングには京都サンガから獲得した小屋松知哉(24歳)、右SBには明治大から獲得したルーキー森下龍矢(22歳)、左SBには徳島ヴォルティスから獲得した内田裕斗(24歳)、CBにはヴィッセル神戸から獲得した宮大樹(23歳)を抜擢。彼らはいずれも将来性があり、また金監督が掲げる「モデル」を体現できる明確なプランのもと、獲得してきた選手だ。
中核を担うべき世代が不在。
ただ、一気にチームを若返らせたという表現に結びつけてしまうのは危険だ。昨季の低迷の煽りは正直、クラブにのしかかっている。事実、今季の選手編成を見ても、ベテランと若手に偏りがある。
2種登録を含めずに見ると10代~21歳までの選手は7人。22歳~24歳までの選手は7人、そのうちルーキーは2人だ。25~27歳までの選手は5人、28~29歳は3人、30歳以上は8人。チームの中核を担うべき25~27歳の層が少ないのが目につく。
他のJ1クラブをみれば、主軸を張る選手、生え抜きの選手、在籍2~4年目を迎える選手がここに入る。若手とベテランの橋渡しなどチームをつなぐ役割も担う重要な存在なのだ。鳥栖の場合、それに当たる三丸拡、高橋祐治(ともに26歳)、福田晃斗、小野裕二(ともに27歳)が移籍。補強もできなかった。
この状況について金監督に単刀直入に聞くと、こう返ってきた。