サムライブルーの原材料BACK NUMBER
J3昇格、今治・岡田武史の本音(下)。
「新スタジアムは健康や教育に使う」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2019/12/16 19:05
日本代表監督を2回務めた名将だったが、公認S級コーチライセンスの更新を見送り、指導者としては引退した。今は経営に専念している。
約1万5000人収容の新スタジアムの実現。
地元企業、行政、学校、そして今治の人と交流を深め、次第に地元のスポンサーから協力を得られるようになっていく。
岡田がこだわったのが、自前のスタジアムであった。
総工費3億円強。今治市から土地の無償貸与を受け、収容約5000人のスタジアムを自前で建てた。自分の本気を伝えたかった。
スタジアムをスポーツ、健康、教育に使う。
「地元の人が集まれる場所、笑顔になれる場所をつくりたかった」という思いも後押しした。だがあくまで岡田が願っているのは、約1万5000人収容の新スタジアムの実現だ。
現スタジアムの前にある広大なスペースが、新スタジアムの候補地である。市議会の承認が下りれば、来年10月には着工するスケジュールになる。
J2、J1のライセンス要件を満たすためだけではない。今治を活気づけていく象徴としたいというのが、岡田の何よりの望みである。
「プライベートで(J1規格のスタジアムを)持っているのはJクラブのなかでレイソルとジュビロだけ。だけど我々のスタジアムが完成したら、大企業がバックについていない初めてのスタジアムになる。それは凄く画期的なこと。
サッカーの試合だけで使うんじゃない。スポーツ、健康、教育で使っていく。一案だけど、学童保育で利用してもらったっていい。スタジアムを使ったいろんなアイデアが出てくると思うんだ。
今復活している熱海に、人が集まらなくなったことがあったでしょ? 何をしたかと言ったら、地元の店の人たちで集まって、こんな素晴らしいところがあったのかと熱海の素晴らしさを再認識して“じゃあこうしていこう”って活気づいていったという話を聞いた。
今治だってできる。今治の良さ、素晴らしさを、みんなが認識していけば、それだけで元気になるっていうことだから。
新しいスタジアムの活用を含めた活動で、この地域をもっと元気づけていくことはできるはず。今治の人たちがFC今治の存在を誇りに思い始めてくれていると俺は感じているよ」