サムライブルーの原材料BACK NUMBER
J3昇格、今治・岡田武史の本音(下)。
「新スタジアムは健康や教育に使う」
posted2019/12/16 19:05
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
あの日、岡田武史は、安堵した。
FC今治の力強さが戻ったことに、チームの活力が戻ったことに。
5試合勝ちなしの状況で迎えたJFL第26節11月3日のホーム、流経大ドラゴンズ竜ケ崎戦は5点を奪っての圧勝劇だった。
勝てない時期に、岡田は今季の指揮をとった小野剛監督に一本のメールを送ったという。
「試合を見ていて、悪循環に陥っている感じがした。言っていいタイミングを考えて、自分が感じていることを伝えた。そのあと、ちょっと話をしたかな。
現場はあくまで監督に任せていることだから。どう感じて、どう対処するかは監督次第。でも監督も(結果が出ず)かなり悩んでいたし、苦しんでいた。彼からもメールが来て、『方向性が見えた気がします』と。
流経大にしっかり勝てたことが、(昇格を決た)岡崎との試合にもつながったんだと思っている」
6人で始めた会社は25人を超えた。
どんな監督も、会長や社長に介入されたくない。岡田だってもちろん分かっている。
しかし経験豊富な指導者目線から見えるものもある。極力、介入しないように心掛けてきたつもりではある。監督の威厳、プライドを傷つけることなく、チームの迷いを取り去るきっかけをつくりたい。
岡田なりの配慮は、現場にもうまく伝わった。流経大戦の快勝劇が、何よりもそれを物語っていた。
FC今治の会長になって丸5年。
新たにスタートさせた会社を文字どおり先頭に立って、引っ張ってきた。バックスタッフ6人で始めた会社は、25人を超えるまでになった。
「社員、選手、コーチ、スタッフがいて、彼らには家族がいる。『給料払えません』とは絶対に言えない。経営を片手間にやれるわけがない」