話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
J1残留の余韻に浸っている暇はない。
湘南には「新たな一歩」が必要だ。
posted2019/12/17 11:30
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Getty Images
「J1に残留できてホッとしました」
同点ゴールを決めた松田天馬の言葉は、素直な気持ちだろう。
J1参入プレーオフで徳島ヴォルティスと対峙した湘南ベルマーレは、1-1のドローながらホームチームが引き分け以上なら残留というレギュレーションにより、なんとかJ1に生き残った。
本来ならば、J1リーグ最終節の松本戦に勝ち、今シーズンの残留を決めているはずだった。だが、勝負は甘くはなかった。
アウェイの厳しい状況の中で1点をリードし、90分を迎えた。逃げ切れるだろうと思った刹那、後半45分に同点ゴールを決められたのだ。静岡で行われていたデスマッチでは清水が鳥栖に勝って残留を決め、鳥栖は得失点差でギリギリ生き残った。ドローに終わった湘南は16位が決定し、プレーオフに回ることになったのである。
「正直みんな諦めかけていた」
試合後、齊藤未月はロッカーの雰囲気が通夜のように感じた。
「J1に残れると思って戦っていたけど、あそこで失点してしまうとさすがにショックは大きかったです。メンタル的なダメージは残っていたと思います」
松本戦の前節、広島に勝って自力残留のチャンスを掴んだのに、それを自ら手放してしまったのだ。今シーズンの湘南を象徴するように、まさかのことがまた最後に起こり、選手たちは運がない、力が足りないと落ち込んでいた。
それでも最後に奮い立ったのは、その苦しい時間を過ごしてきた経験ゆえだった。
齊藤はいう。
「8月からいろんなことがあって、正直みんな諦めかけていたし、もう落ちてもしょうがないな、厳しいなって言う雰囲気が漂っていた。それでもまだJ1に残れるチャンスがあった。長く苦しい時期を乗り越えてきたことを考えれば、松本戦からの1週間は短かったし、次が最後のチャンスだと思って気持ちを切り替えることができた」