球道雑記BACK NUMBER
大学日本一を引っさげてプロの道へ。
慶大・郡司裕也は根っから捕手気質。
posted2019/11/23 11:50
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
背筋が凍てつくように感じたのは強い北風のせいだけじゃないだろう。
秋の大学日本一を決める明治神宮大会の決勝戦で、初回に先制2ランを放ちながら喜びを露わにすることなく、淡々とダイヤモンドを一周する21歳。その姿を見て、身震いがした。
彼のポジションはキャッチャーである。ゲームに火をつけた状態で、そのまま初回の守備に入れば、自軍のピッチャーを火事場にぶち込むようなことにもなる。
ならば火を消す。
冷静沈着に、ただスコアボードに「2」を刻んだ事実だけを受け止めて、すぐさま次の守備に備える。慶應大学の主将・郡司裕也は、心・技・体、ともに揃った大人のキャッチャーであることを、この大舞台でも証明し、チーム19年ぶりの優勝に大きく貢献した。
根っからのキャッチャータイプ。
「子供っぽくない」
「オヤジくさい」
幼少の頃からそう言われることが少なくなかった。
「小さな頃は、親からも切り替えの早い子と思われていたみたいです。そのくらいの歳の子だったら『これ買って』とか駄々をこねたりもするじゃないですか。でも、僕はダメと言われたら、すぐに諦めて『別にいいや』みたいな感じだったらしくて、すごく育てやすかったと聞いています」
両親と意見の食い違いで口喧嘩になっても、すぐに自分から謝って、丸く収めようとした。
「それはそれで『なんでそんな簡単に謝るんだ? 反省しているのか?』って怒られたりもするんですけどね(笑)。争いごとが好きじゃないというのはありますけど、これはもう性格ですね」
野球のバッテリーをプラス端子とマイナス端子に例えるなら、彼は間違いなくマイナス端子に属すだろう。試合中はあまり我を出さず、自軍のピッチャーの良さをできる限り受け止めようといつもアイデアを練っている。
「今、考えればキャッチャーを選んだ自分自身に拍手を送りたいです」と、言うように生まれついてのキャッチャータイプだ。