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大学日本一を引っさげてプロの道へ。
慶大・郡司裕也は根っから捕手気質。 

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永田遼太郎

永田遼太郎Ryotaro Nagata

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photograph byKyodo News

posted2019/11/23 11:50

大学日本一を引っさげてプロの道へ。慶大・郡司裕也は根っから捕手気質。<Number Web> photograph by Kyodo News

明治神宮大会決勝、先制2ランを放った郡司裕也。主将の1発で勢いづいた慶應大が19年ぶりに大学日本一に輝いた。

データだけでなく、試合中の感覚が大事。

 この秋のリーグ戦前の準備もこれ以上ないくらい念入りに行った。

「秋のリーグ戦で言えば、春のリーグ戦の映像を8月中旬くらいから見始めて、細かいデータはデータ班がまとめてくれる。その前の作業を開幕前の1週間くらいでやっています」

 相手チームのデータといっても、各リーグ戦10試合かそこらのデータである。調子の良し悪し、半年間の成長分も考慮すれば、そればかりを当てにはできないと言う。

「そもそもリーグ戦の数字ってデータ数がそんなにないじゃないですか。大体10試合くらいのデータで『インハイは苦手』と書いてあっても、インハイに来てるのが10球未満だったりする。データとして信ぴょう性があるかと問われたら微妙なところもある。それまで10打数0安打だったものが、そこから5打数5安打になったなんてことは頻繁にあり得ることなので。プロ野球みたいにデータが莫大であれば、かなり信用できると思います。でも、六大学の場合は選手のフォームもコロコロと変わったりするので、データというよりも試合の中の感覚の方が大事かなと思っています。その上で困ったときにデータが必要になるのかなと」

捕手出身の大久保監督に学んだこと。

 キャッチャーに必要なノウハウは、同じキャッチャー出身の大久保秀昭監督から学んだ。

「試合勘というか野球観はかなり養われたと思いますね。試合の先を読んだり、このランナーを出しても打順の巡り合わせで次のバッターで勝負すればいいやとか、大局観を持てるようになったとは感じますね」

 大久保監督は日頃から「ピッチャーはキャッチャーが育てるもんだ」と口にしている。

「同じオープン戦で投げるにしても、普段試合に出ているピッチャーだったら新しい球種やいろいろなことを試してチャレンジできる。だけどメンバー当落線上の選手だったら、同じリードではなくて、その選手の長所を一球一球に全部出して、結果を出させて自信をつけさせないといけない。投手の性格も見ながら『こいつは調子が悪くなるとどんどん腕が振れなくなる。だからお前がもっとガンガンやらせるようにしなきゃダメだ』とか、ピッチャーとの関わり方を教えてもらったと思います」

 4年秋の東京六大学リーグ戦では、1点以内に抑えた試合が11試合中7試合を数えた。それも限られた投手の力に頼ってのものではなく、タイプの違うピッチャーの良さを引き出しての数字で、この4年間教わってきた集大成をこれ以上ない形で示した。

【次ページ】 高い出塁率を生んだ選球眼。

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