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サイン盗みの歴史とアストロズ。
手を替え品を替えた120年間。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byGetty Images

posted2019/11/23 11:30

サイン盗みの歴史とアストロズ。手を替え品を替えた120年間。<Number Web> photograph by Getty Images

2017年のワールドシリーズ、アストロズの本拠地で行われた第3戦。ダルビッシュはその後、第7戦でも同じ1回2/3でノックアウトされ負け投手に。

80インチの望遠レンズで。

 1959年のオールスターでも、物議を醸す事件が起こった。その年、テレビ放送に当たったNBCが80インチの望遠レンズをセンター後方に設置し、捕手をクロースアップで撮った映像を全米に流したのだ。

 時のコミッショナー、フォード・フリックはこの放送に激怒した。捕手のサインが丸見えだったら野球がまったく面白くなくなるではないか、と咆え立て、80インチ・レンズの使用は即刻禁止された。

裏の小部屋に潜むメッセンジャー。

 '59年から'60年にかけてのインディアンスも、2017年のアストロズに近い方法で、サインを盗んでいた。

 センター後方から望遠鏡でサインを盗み、ダグアウト裏にコードでつながったブザーを鳴らして、球種を伝えたのだ。裏の小部屋に潜むメッセンジャーは、ドアを叩いてコーチに知らせ、コーチはサインを使って打者に伝達する……。

 どれもこれもセコい手口だ。ハイテクがのさばる現在からすれば牧歌的な匂いさえしないでもないが、やられる側はたまったものではない。

 '17年ワールドシリーズの第7戦、ドジャースのダルビッシュ有が初回から滅多打ちにされたあの試合でも、アストロズはこの手口を使っていたのだろうか。

 だとすれば、なんだか白けるし、神経質になった相手チームがイニングごとにサインを変え、打者が替わるたびにサインを変える事態も、当然のなりゆきとなる。そんなことをしていたら、試合時間は延びる一方だし、疑心暗鬼の陰険な気配が球場に充満してしまうのだが。

【次ページ】 笑うに笑えない逸話。

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