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代表キャップ98の鉄人・大野均が語る
3度のW杯の経験とジャパンの誇り。
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![戸塚啓](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/7/90/img_37c8e9203c8fa7b898f88a9f8471dbc79774.jpg)
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byWataru Sato
posted2019/09/17 11:30
![代表キャップ98の鉄人・大野均が語る3度のW杯の経験とジャパンの誇り。<Number Web> photograph by Wataru Sato](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/a/e/700/img_ae88754133b50864d1e629cc0b5165c7116117.jpg)
「W杯を見た子供たちがラグビーって面白い、ラグビー選手ってカッコいいと感じてラグビーを始めてくれたら」と普及への想いも強い。
あの、伝説の勝利の只中で。
南アフリカをも恐れないマインドセットができていたのは、大野だけではない。序盤から拮抗した展開のなかで、日本の選手たちは手応えを膨らませていくのだ。
「前半からタックルにしてもアタックにしても、自分たちのやりたいことがハマっているな、という感覚はありました。すごくミスの少ない試合で、チーム全体が集中してプレーできていた。逆に南アフリカは、日本の低いタックルに少しずつ戸惑っているというか、イライラしていると感じていました」
29-32で迎えた後半終了間際、日本は敵陣でペナルティを得る。キックでゴールを狙える距離であり、ジョーンズHCは五郎丸歩に狙わせることを指示した。
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だが、ピッチで戦う選手たちはスクラムを選択する。
「僕自身は交代していたのですが、キャプテンのリーチ(マイケル)がスクラムを選択したときには『ありがとう』っていう気持ちでした。それまでスクラムを組んでいたFWのひとりとして、押せるという思いがあったので」
スクラムで押し通すことはできなかったものの、日本はボールを展開して南アフリカを揺さぶっていく。相手はシンビンでひとり人数が少ない。チームが磨いてきた速いテンポのアタックをすれば、どこかで数的優位を生み出せる。
そして、カーン・ヘスケスがインゴールへ飛び込んだ。
日本34、南アフリカ32──。
五郎丸のコンバージョンが残っていたが、これ以上の得点は必要ない。
ラグビーの枠を超えたスポーツ史に残るアップセットが、2015年9月19日に生まれたのだった。
ジェイミー体制で、徐々に外れることが増え……。
ジェイミー・ジョセフのもとで動き出したチームにも、大野は招集されている。だが、'19年のW杯が近づくにつれて、彼の名前は日本代表のリストから消えていった。
「もちろん寂しさはありました。'16年11月にミレニアムスタジアムでウェールズと接戦をしている試合をテレビで観たときは、自分がそこにいないことに悔しさがありました」
東芝ブレイブルーパスで現役を続けているのに、桜のジャージを着ることができていない。悔しくて、歯がゆくて、もどかしくて、日本代表の試合をテレビで観られないこともあった。