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代表キャップ98の鉄人・大野均が語る
3度のW杯の経験とジャパンの誇り。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byWataru Sato
posted2019/09/17 11:30
「W杯を見た子供たちがラグビーって面白い、ラグビー選手ってカッコいいと感じてラグビーを始めてくれたら」と普及への想いも強い。
「ジャパンでラグビーができているうちが華だよ」
同時に、大野の胸には選ばれた選手へのリスペクトがあった。彼らラグビー選手が「ジャパン」と呼ぶチームには、自らのすべてを捧げるにふさわしい魅力と魔力と、責任感と連帯感があるのだ。
「W杯前のジャパンの合宿の合間に、チームメイトの徳永(祥尭)と会ったんです。『キツい練習が待っていることを考えると、合宿の前日は泣きたいくらい憂鬱になる』と彼が話したので……」
泣き出さないまでも笑顔のない後輩に、大野はそっと告げた。
「気持ちは分かるよ。でも、いつかは外れる時が来る。ジャパンでラグビーができているうちが華だよ」
徳永は「その言葉、重いです」と答えた。W杯に初めて挑む27歳を、大野は笑って送り出した。
41歳は、W杯後のトップリーグに備えている。
「いいことも悪いことも、楽しいこともキツいことも、いつかは終わる。楽しみなW杯も、いつかは終わります。それだったら、目いっぱい楽しんでやるというか、日本開催のW杯に出られることを幸せに感じて欲しいですね。プレッシャーを感じるのも、選ばれたからこそ。ベスト8、ベスト8と言われていますが、そこを見るよりもまず、目の前の1試合に集中してほしいんです」
大野自身のモチベーションも、ジャパンに選ばれていた当時と変わることはない。
「まだまだラグビーをやりたい、と思っています。練習に行きたくないなと思う日もありますけれど、試合会場に着くと次もまたこのグランドに立ちたい、声援のなかでプレーしたいなと思うんです」
W杯が終われば、トップリーグが来年1月から幕を開ける。これまでとは違った4年に一度の夏は過ぎ去り、41歳に馴染みの景色が戻ってくる。