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代表キャップ98の鉄人・大野均が語る
3度のW杯の経験とジャパンの誇り。
posted2019/09/17 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Wataru Sato
2007年から4年おきに、大野均は夏の終わりを海外で過ごしてきた。'07年はフランスに、'11年はニュージーランドに、'15年はイングランドに滞在した。
ラグビーW杯の日本代表として、桜のジャージを着た。試合後に身体中を襲う痛みさえも、日本ラグビー界の名誉を担っているからこそだと誇れた。
「この時期に日本代表に加わっていないことに対して、ちょっと寂しい部分はありますね。でも、いまの日本代表はすごくいい準備ができているので、ベストな状態でW杯を迎えて欲しいという気持ちだけです」
大野にとってのW杯は、「現役中に1度は出られたらいい」という位置づけのものだった。目標というよりは夢であり、希望というよりは願望に近かかったのかもしれない。
希望が叶った時に胸に沸き上がった思い。
'07年のW杯に初めて出場した大野は、オーストラリアとの開幕戦を除くプール戦の3試合に先発出場する。「一度は出られたら」という思いが現実になったわけだが、気持ちは満ちたりていない。獰猛な意欲が、胸中で沸き上がっていた。
「次も出たい、という欲が生まれました。W杯って、独特のピリピリ感だったり緊張感だったりがあるんです。現地の空港に降りた瞬間から、W杯の空気が漂っているんですね。
ラグビーが文化として根付いている国だからなのでしょうが、ホントに着いた瞬間から『この国で自分たちは戦うんだ』という覚悟を決めさせてくれる雰囲気がありました」
自身2度目の'11年大会では、大会2勝をチームの目標に掲げた。優勝経験を持つニュージーランド、前回4位のフランス、トンガ、カナダとのプール戦で、'91年以来となる勝利をふたつもぎ取る。野心的なチャレンジだった。
「でも、初戦のフランス戦、次のニュージーランド戦に負けてしまって。トンガとの第3戦に勝たないと目標が達成されない状況で、自分たちにプレッシャーをかけてしまった。自滅的なミスを重ねて、それまでずっと勝ってきたトンガに18-31で負けてしまった。
最後のカナダ戦は残り10分で8点差をつけていて、どこかで勝利を確信したところがあった。残り6分で8点取られて、23-23の引き分けです。僕らからすれば、負けに等しい引き分けでした」