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ベルマーレのサッカーは生きている。
監督不在を感じさせない哲学の貫徹。

posted2019/08/19 15:30

 
ベルマーレのサッカーは生きている。監督不在を感じさせない哲学の貫徹。<Number Web> photograph by Getty Images

ベルマーレのスタイルは、簡単にはなくならない。それを示すような鳥栖戦だった。

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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Getty Images

 いつもと変わらない景色が、スタジアムに広がっていた。

 選手が走る。観衆が沸く。選手が競る。観客が唸る。ゴールに迫る。観衆が沸き立つ。

『やるべきことは変わらない。どんな時も湘南ベルマーレはひとつになって戦う』

 試合前の電光掲示板に掲げられたメッセージどおりの雰囲気を、選手と観衆が一体となって作り上げていった。

 ベルマーレが彼らの望まない形で、それも突如として話題に上がったのは、8月12日のことだった。曹貴裁監督が選手やスタッフにパワーハラスメントを行なっていた疑いがあると、一部スポーツ紙に報道されたのである。

 その日から続報と後追いの記事が溢れ、選手とスタッフは予期せぬ騒動の当事者となる。クラブの判断で曹監督は指揮、指導を控えることとなり、Jリーグによる調査結果が出るまで高橋健二コーチがチームの先頭に立つこととなった。

 指揮官不在のなかで迎えた8月17日のリーグ戦は、16位のサガン鳥栖が相手だった。

 いつもどおりに3-4-2-1の布陣で臨むベルマーレだが、気持ちが前のめりになり過ぎている。相手が差し出してくれるミスを生かせず、自分たちも危険なミスを冒してしまう。25分と41分には左サイドを崩され、イサック・クエンカに2連続ゴールを許した。

 ひとりひとりの頑張りが「線」として結びつかないうちに、ビハインドを背負っている。率直に言ってリズムは良くない。しかし、ここで破滅の足音を近づけないのが、ベルマーレというチームである。

1点、そしてもう1点と。

 43分だった。右サイドからのクロスをきっかけに立て続けにシュートを浴びせ、最後は松田天馬が左足でねじ込む。2シャドーの一角を担う24歳のシーズン2点目で、ベルマーレは1点差に詰め寄って前半を終えた。

 後半は一進一退の攻防が続く。次の1点が大きな意味を持つ。スコアを動かしたのはベルマーレだ。

 57分、左サイドから松田があげたクロスを、ファーサイドの坂圭祐がヘッドで合わせる。ゴールカバーの選手にかきだされたボールを、右ウイングバックの古林将太が頭でプッシュした。

 前半にも決定的なヘディングシュートを放っていたCBの坂が、左CKの流れでゴール前に残っていたなかで得点に絡んだ。

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