“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
もがき苦しむ東京五輪のエース候補。
小川航基の“多彩さ”は水戸で輝くか!?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/07/23 11:50
琉球戦で途中出場ながらゴールを決めたFW小川航基。試合後、希望に満ちた笑顔を見せた。
トゥーロン国際で見えた微かな光。
この決断の大きなきっかけとなったのが、6月のトゥーロン国際だった。
ライバルの上田と前田がA代表としてコパ・アメリカに出場している中、小川は約半年ぶりにU-22日本代表に選出。準決勝のメキシコ戦で同点ゴールを決めると、ブラジルとの決勝でも大会無失点だった相手から同点ゴールを奪い、準優勝に貢献した。
「僕の中でトゥーロンが物凄く大きかった。『ジュビロで点を取れないのはなんでだろう?』と自分の中で考える時はありましたが、『でも、代表に行ったら点を取れるのはなんでだろう?』と考えたときに、チームの戦術だったり、その中で自分がどう輝くかということを肌で感じることができた。いろんなところの環境を経験したのが大きかった」
磐田で点を取るために、3年半もがき続けた。しかし、取れなかった。代表ではコンスタントにゴールを決めている自分がいる。この事実を改めて突きつけられた彼は、環境を変えることの重要性に気づく。
「もう試合に出て学ぶことしかないと思いましたし、どんどん試合に出て、得点を決めたい気持ちが強くなった。(移籍は)自分自身、相当考えた上での決断でした。この決断に対して、『ああ小川、移籍ね』と思った人もいると思うし、かたや『(移籍が)遅くないか』と思った人もいると思う」
好調のJ2水戸に加入した小川。
東京五輪に向けて、巻き返しのラストチャンス。カテゴリーこそ下がったが、水戸は現在J2で昇格争いを演じるなど、好調を維持しているチームだ。
彼にとってこの巡り合わせをベストな選択とするべく、水戸で結果を出すことに全身全霊を傾けている。
「移籍が決まったぐらいからずっと水戸のサッカーを見ていて、何となくイメージは持っていました。こっちに来ても、シゲさん(長谷部茂利監督)のミーティングなどで『水戸はこういうサッカーをする』ということを、しっかりと染み込ませました。
たとえば、前から行く切り替えを3秒以内にして、より相手ゴールの近い位置でボールを奪い返す。それを90分間やり続けることがこのチームの特徴。そこをできているがゆえに、今この順位にいると思うので、そこをもっと既存の選手以上にやっていきたいと思いました」