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引かないナダルが12度目の全仏制覇。
不調の前哨戦で下した重要な決断。

posted2019/06/11 16:30

 
引かないナダルが12度目の全仏制覇。不調の前哨戦で下した重要な決断。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

全仏優勝直後、クレーコートに大の字となったナダル。試行錯誤の末の栄冠だったことを象徴した一場面だった。

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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Hiromasa Mano

 優勝を決めたラファエル・ナダルがコートに倒れ込み、大の字になった。自身が持っていた、同一のグランドスラム大会での最多優勝記録を更新する全仏12度目の優勝だった。

 イエローのシャツの背中を赤土で汚し、両拳を突き上げる。何度、この光景を見ただろう。張り付いたレッドクレーは彼の誇りだ。こうして赤土と喜びを分かち合うために、けがを治し、不調に耐え、強度の高いトレーニングをこなしてきた。

「何も考えられなかった。ただ、体を投げ出した。急に緊張から解放されたんだ」

 歓喜の瞬間をナダルが振り返った。計7試合で失セット2の堂々たる優勝だったが、ここに至る道は案外険しかった。

 3月のインディアンウェルズではロジャー・フェデラーとの準決勝を右ひざのけがで棄権、同じけがで、続くマイアミも欠場。得意のクレーコートシーズンには故障明けで臨むことになった。

 初戦のモンテカルロではファビオ・フォニーニに4-6、2-6で敗れ、4強止まり。バルセロナも準決勝でドミニク・ティームに4-6、4-6で敗れた。全仏の1つ前のローマで、ようやくクレーコートシーズン最初のタイトルを獲得。最後の最後に、なんとか調整が間に合った。

クレーで「3敗」は異変だった。

 クレーコートの前哨戦で14勝3敗は立派な成績だが、キング・オブ・クレーの3敗は異変であり、事件だった。なにしろ'06年と'10年はクレーコートシーズンを無敗で終え、1敗しかしなかった年が全仏初優勝の'05年以降、昨年を含め7度もあったのだ。11度優勝の全仏のタイトルが守れるか、ローマで優勝するまでは、ほかでもない、自分自身が疑っていただろう。

 ナダルはクレーコートシーズンの序盤を振り返り、こう語っている。

「モンテカルロからバルセロナの最初まではつらかった。楽しめていなかったからだ。体に何カ所か問題があり、快復するまで休む選択肢もあった。もう1つの選択肢が、テニスに取り組む姿勢とメンタリティを根本的にあらためることだった。考えたよ。

 そして、自分は変われる、少しずつ向上するためにもう一度ファイトできる、と思ったんだ。そこから日に日によくなった」

【次ページ】 ティーム戦は昨年とは違う展開に。

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