プロ野球亭日乗BACK NUMBER
中途半端なビデオ判定は逆効果だ!
プロ野球界に足りない「第三者の目」。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2019/06/11 08:00
4-4で迎えた8回2アウトの場面で、問題の判定は生まれた。スポーツにおける審判の問題は、永遠のテーマともいえる。
審判自身がビデオで自分の判断を覆せるのか?
アグリーメントでは、このようなケースには「ファーストジャッジを優先する」という規定があり、それに従った措置だったという説明だった。
ただ、試合後に中日サイドで改めてビデオを確認した結果「一番、気になったのは、タッチのときにボールがミットになかったんじゃないかということ」(与田監督)と新たな疑問も生まれている。
確かに高谷はボールを持った右手をミットに添えてタッチにいっているが、上体が伸びたタッチの瞬間には、その右手とミットが離れているように見える。
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中日サイドは意見書の提出をセ・リーグ統括に打診したが、リクエストの結果に対する意見書はもとより認められていない。結局、質問状という形でこの判定に関しての疑義をリーグ側に投げかけることにしたわけだが(これも最終的には不可とされた)、この騒動は改めてリクエスト制度におけるビデオ検証の問題点をクローズアップすることになったはずだ。
その一番の問題とは、ジャッジをした審判員が自分たちで自分たちの誤りを判断することにある。
要はジャッジをした審判団がビデオを観て、自分たちの判断が正しかったかどうかをチェックする。そこに第三者の目がないということだ。
ではMLBやサッカー界ではどうなのか?
メジャーリーグ(MLB)では2014年から監督がアンパイアの判定に対してビデオ判定を要求できる「チャレンジ制度」が導入されている。
テレビ中継でもお馴染みだが、チャレンジを受けたアンパイアは、自分で映像を検証するのではなく、ベンチ横でインターカムをつけてビデオ判定の結果を待つだけだ。
ニューヨークの専用スタジオが全球場の映像を一括管理し、実際にビデオを検証して判定を下すのは、そこに待機する8人の分析担当審判員である。
昨年のワールドカップで話題になったサッカーの「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」でも、主審からの要求によってピッチ外のオペレーション・ルームにいるビデオ・アシスタント・レフェリーがビデオを検証し、その判断に基づいて主審が最終判定を下す仕組みとなっている