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錦織圭のツォンガ戦は快勝ではない。
何度かの失態を次にどう生かすか。
posted2019/05/31 11:30
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Getty Images
世界ランキング自己最高5位の難敵を破った、2015年の準々決勝の雪辱を果たした、フォアハンドを使って終始攻めた、第4セットは0-3の劣勢を覆した――と肯定的な要素はいくつも挙げられる。
しかし、全体的にはなんとか及第点というレベルの試合だった。
もちろんジョーウィルフリード・ツォンガは強敵だ。だが、それはすなわち、勝たなければいけないというプレッシャーに邪魔されず、一心に勝負に打ち込める相手ということでもある。
ならば、もう少し本来の攻撃をコンスタントに繰り出したかったし、ねじふせるような勝ち方をしてほしかった。
したがって、錦織快勝という見方には同意しない。
ツォンガとの勝負付けは済んでいる。
錦織は「フォアハンドは強烈で、攻め方はトップレベル」と相手をリスペクトするが、今の力関係では錦織が明らかに上だ。
錦織が'15年全仏で負けたのは、強風下で、飛距離が長く滞空時間の長いボール、かつ、しっかり回転のかかった重いボールを生かすツォンガの作戦がはまったにすぎない。プレースピード、つまりタイミングの早さや動きの速さを含めたプレー全体のスピードでは錦織が大きく上回り、優位は明らかだ。
それを証明したのが、全仏の雪辱に成功した'16年全豪だった。この試合で両者の“勝負付け”は済んだと見る。
実際、第1セットからツォンガは錦織の速さについていけず、牛若丸の動きに目を回す弁慶のように立ち往生した。