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錦織圭のツォンガ戦は快勝ではない。
何度かの失態を次にどう生かすか。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2019/05/31 11:30
2回戦で地元勢でなおかつ実力者のツォンガに勝利した錦織圭。5年連続3回戦進出は安定した力の賜物だ。
第4セットでも“減点”の展開が。
ツォンガは試合後、「こうしたハイレベルな試合をしばらくやっていなかった」と話した。昨年4月に左ひざを手術、戦線に戻りノバク・ジョコビッチらトッププレーヤーとも対戦したが、その中でも錦織のプレーに脅威を感じていたことが分かる。
だから、その相手を徹底的にたたき、早々に白旗を掲げさせるような試合にしてほしかった。
ところが、第1セットは形勢を逆転されて落としてしまう。また、調子を取り戻したはずの第4セットも、立ち上がり、5度のブレークポイントを逃し、次のサービスゲームでブレークを許した。こうした失態が“減点”の理由だ。
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最初のつまずきは第1セット、ブレークで4-3としてからの3つのゲームだった。たたみかけたい場面でサービスゲームを落とし、さらに4-5からのサービスゲームもあっさり落とした。
錦織はこう振り返る。
「相手のバックハンドにボールを集めすぎたのと、自分のボールに伸びがなくなって、あの(4-3からの)3ゲームは、守ったわけではないが、打ち切れなかった」
精度と威力がなかなか両立せず。
立ち上がりから、フォアハンドで支配しようという狙いは明確だった。
このコラムで何度も書いたように、フォアハンドは錦織の生命線だ。ツアー随一のバックハンドの持ち主だが、フォアの破壊力がなければこのレベルでは勝っていけない。
あるいは、プレーにリズムが生まれてこない。上位との対戦が想定される準々決勝までに、フォアハンドの調子をピークに上げなくてはいけない。武器を鍛えていかなくてはならない。そんな狙いもあったと思われる。
だが、クロスもダウン・ザ・ラインも逆クロスも、精度と威力がなかなか両立しなかった。崩れてはいなかったが、どちらかと言えばボールを置きにいっていた。その微妙な違和感、自信のなさが、第1セット終盤の形勢逆転につながった。