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三大自転車レースは“年に1度のお祭り”。
ジロ初参戦の日本人は明暗分かれる。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph bySonoko Tanaka
posted2019/05/16 07:30
世界三大自転車レースの1つ「ジロ・デ・イタリア」。イタリアの町並みだけでなく、山岳地帯を走り抜ける。
西村「ここから挽回していくしか」
首位に立ったスロベニアのプリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ビスマ)が個人総合成績のリーダーのみに着用が許されるピンクジャージのマリアローザに袖を通し、シャンパンを抜くなか、176番目の男はレース後、肩をがっくりと落とし、声をしぼり出した。
「人生最大の失敗をしてしまった。多くの人たちの思いを裏切ることになりました。僕をジロに出すために尽力してくれた方たちに対して、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」
将来性を期待される24歳。チームを統括する大門宏マネジャーには経験を糧に成長することを促され、本人も必死に前を向いた。
「ここから挽回していくしかないです。力をつけて、脚力を上げないと話になりません」
第3ステージで仕掛けた初山。
一方、昨年もヨーロッパのレースを転戦して経験を積んでいる初山は第1ステージをトップから2分47秒遅れの170位でフィニッシュ。第2ステージはボローニャから205km南下し、トスカーナ州のフチェッキオまでのロードコースを走る。途中で集団から遅れて後方に位置したが、体力を無駄に使うことなくうまくやり過ごした。ジロの雰囲気を感じながらも、特別な緊張はないという。
そして、迎えた第3ステージ。「万能の天才」と呼ばれた芸術家レオナルド・ダ・ビンチが生誕したビンチをスタートし、チームの作戦通りにすぐに仕掛けた。
しかし、大集団から飛び出したものの、後ろを振り返ると、付いてくる選手は誰もいない。
想定外の展開。他の選手を風よけに使えない単独走行は体力の消耗が激しく、リスクが大きいのだ。本人も集団に戻ることを考えて、無線で水谷壮宏監督の声に耳を傾けると、「そのまま逃げろ」の指令。集団とのタイム差を2分、3分、4分、5分とどんどん広げていく。
「途中からはもう1人で行くしかないなって感じでした。どうせ(集団に)つかまるならば、ゴール(オルベテッロ)近くでつかまりたいかなと。少しでも長く逃げようと思いました」
強い横風が吹くなかでも、ペースを落とさずに淡々とこぎ続けた。すぐ後ろでチームカーのハンドルを握っていた水谷監督も無理をさせないようにしていた。風向きなども考慮し、体力の配分を考えていたという。